19位のチームが、90分間で20本のシュートを放った。
保持率60%。枠内シュート5本。コーナーキック8本。
これは上位チームの数字じゃない。降格圏にいるFC今治の数字だ。
結果は1-1の引き分け。
勝ち点3を手にできなかった悔しさはある。
でも、この試合のデータを見れば、今治のサッカーが確実に「強さ」に近づいていることがわかる。
僕は元プロとして10年間戦ってきた。だから断言する。順位表の数字だけ見て「やっぱりダメだ」と思っている人は、この記事を最後まで読んでほしい。
この記事を読むと、以下のことがわかる。
- 今治が甲府戦で見せた「本物のポゼッション」の正体
- 久保山体制で積み上がっている「形」の具体的な中身
- 降格争いの順位表を冷静に読み解く方法
逆に、読まないとどうなるか。数字だけを見て不安に飲まれ、チームが確実に成長している事実を見逃す。それは一番もったいない。
試合データ:今治が「量と質」で殴った90分

まず、この試合のスタッツを見てほしい。
| 項目 | FC今治 | ヴァンフォーレ甲府 |
|---|---|---|
| スコア | 1 | 1 |
| 保持率 | 60% | 40% |
| シュート | 20 | 5 |
| 枠内シュート | 5 | 2 |
| パス(成功率) | 484(77.1%) | 335(69%) |
| CK | 8 | 6 |
| FK | 13 | 9 |
| イエローカード | 0 | 2 |
(出典:スポーツナビ)
今治が試合を完全に支配していたことがデータではっきりと出ている。
ポゼッション60%という数字だけなら「ボールを回していただけ」と言われることもある。でもシュート20本という数字が、それが「本物のポゼッション」だったことを証明している。
ボールを持つだけでシュートを打てないチームは山ほどある。
心理学では「努力の錯覚」と呼ばれる現象だ。
「やっている感」だけで成果が出ない状態。
でも今治のこの試合は違う。
ポゼッションがちゃんと攻撃に変換されている。
シーズンデータが裏付ける「今治の攻撃力」

これは甲府戦だけのことではない。
シーズン全体のデータを見ると、今治の攻撃力がリーグ上位にあることがわかる。
| 指標 | FC今治 | リーグ順位 | リーグ平均 |
|---|---|---|---|
| 攻撃回数 | 121.7回 | 6位 | 119.0回 |
| チャンス構築率 | 11.0% | 10位 | ー |
| シュート | 13.4本 | 11位 | 13.9本 |
| ゴール | 1.2 | 11位 | 1.3 |
| クロスCBP | 28.17 | 2位 | ー |
| 直接FK | 12.9本 | 1位 | 10.9本 |
(出典:Football LAB 2026/27シーズンサマリー)
攻撃回数リーグ6位、クロスのチャンスビルディングポイントがリーグ2位。
これは「ただボールを持っているだけのチーム」の数字ではでない。
19位のチームにJ2トップスコアラーがいる。
この事実だけでも、今治の攻撃が本物だとわかるはずだ。
守備データの現実:攻撃力と守備力のギャップ

ただし、ここからが今治の課題だ。
| 指標 | FC今治 | リーグ順位 |
|---|---|---|
| 被シュート | 16.0本 | 17位 |
| 被ゴール | 1.9 | 19位 |
| 被シュート成功率 | 12.0% | 18位 |
| クリア | 30.5回 | 3位 |
(出典:Football LAB 2026/27シーズンサマリー)
被ゴール1.9はリーグ19位。
攻撃はリーグ上位なのに、守備はリーグ下位。
このギャップが勝ち点を削っている。
ただし注目すべきは「クリア30.5回(3位)」だ。
問題は「その前の段階」——ポジショニングとマーキングで防げるはずのシーンで後手に回っている可能性がある。
この試合で見えた「3つの強み」

森晃太の質的優位性
森晃太はこの試合もパフォーマンスは圧巻だった。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| シュート | 3本(枠内1本) |
| ドリブル成功率 | 80%(8/10) |
| クロス | 8本 |
| アシスト | 1(梶浦の同点ゴール) |
| パス | 35本(68.6%) |
(出典:スポーツナビ)
ドリブル10回で成功率80%。これは異常な数字だ。
森のシーズン全体の攻撃チャンスビルディングポイントは20.45でチームトップ。
クロスCBPは8.63で、今治のクロスCBPリーグ2位を一人で支えている。
梶浦の同点ゴールも、森が右サイドから仕掛けてクロスを上げたところに梶浦がファーで合わせた形だった。
左から崩して右の森で仕留める。
久保山体制が目指すサッカーの「形」が再現性ある形ででた。
僕も現役時代、チームの形が出始める瞬間を何度か経験した。
「このタイミングでここにボールが来る」という共通認識がピッチ上でつながる感覚。
森と梶浦のゴールには、その匂いがした。
成長②:中井卓大(ピピ)の投入が「ギアを上げた」
後半開始から投入された中井卓大(ピピ)のスタッツも興味深い。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| パス | 44本(77.3%) |
| ATサード(成功率) | 17本(82.4%) |
| こぼれ球奪取 | 2 |
(出典:スポーツナビ)
後半だけでパス44本。ATサード(アタッキングサードでのパス)17本成功率82.4%。
これは後半の攻撃を完全にコントロールしていたことを意味する。
後半0分から2人を同時に入れたのは、久保山監督の明確な意思だ。
「このメンバーで勝ちに行く」という設計が見える明確な采配だった。
成長③:梶浦勇輝の「殻を破る一撃」
同点ゴールを決めた梶浦勇輝のスタッツも光る。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| シュート | 4本(枠内2本) |
| 得点 | 1 |
| こぼれ球奪取 | 4 |
(出典:スポーツナビ)
シュート4本、こぼれ球奪取4。
ボランチのポジションでこの数字を出すのは、前への推進力がある証拠。
梶浦はシーズン通算2ゴール。
ゴール期待値0.872に対して2得点で期待値を上回っている。
「ここぞ」という場面で決められる選手は、チームの勝ち点を左右する。
甲府の「しぶとさ」:データで読むGK東ジョンの壁

この試合、今治が勝てなかった最大の理由は甲府のGK東ジョンだ。
| 項目 | 東ジョン |
|---|---|
| 被枠内シュート | 5本 |
| セーブ率 | 80% |
(出典:スポーツナビ)
5本の枠内シュートのうち4本を止めた。
今治が20本シュートを打って1点しか取れなかった背景には、この壁がある。
甲府全体を見ると、KAGI(攻撃の質を測る指標)がリーグ4位という興味深いデータがある。
少ないチャンスでも質の高い攻撃を作れるチーム。
甲府の先制点もまさにそれで、野澤のシュートをGK立川がはじいたところを武井成豪が押し込んだ。
こぼれ球への反応、ゴール前の嗅覚。
シュートわずか5本で1点を取る甲府の効率の良さは脅威だった。
甲府サポーターにとってもこの試合は「勝ち点3を失った」感覚だろう。
先制した展開で追いつかれた。
でも野澤、小出悠太、遠藤光のDF陣が体を張り、タックルとクリアで今治の猛攻を耐えた時間帯は確実にあった。
甲府は甲府で、戦えるチームになりつつある。
失点シーンから学ぶ
今治の唯一の失点は、
セットプレーの流れから生まれたこぼれ球だった。
今治のシーズン失点パターンを見ると、構造的な課題が浮かぶ。
| 失点パターン | 失点数 | 割合 |
|---|---|---|
| クロスから | 8 | 30.8% |
| セットプレーから | 7 | 26.9% |
| こぼれ球から | 5 | 19.2% |
| スルーパスから | 3 | 11.5% |
| PK | 1 | 3.8% |
(出典:Football LAB 2026/27シーズンサマリー)
クロスとセットプレーで全失点の57.7%を占める。
この試合の失点もまさにその形だった。
うまくいっていないチームには「なんでそこで失点するの?」という試合が続く。
僕もプロ時代に経験した。流れが良い時間帯に、ワンチャンスで失点する。
でもこれは「メンタルの問題」で片づけてはダメだ。
セットプレー時のマーキングとセカンドボールの処理という「構造の問題」だ。
構造の問題は、練習で改善できる。
降格争いの順位表を「冷静に」読み解く
最後に、降格争いの現実を見てほしい。でもパニックにならないでほしい。
| 順位 | チーム | 勝点 | 試合 | 勝 | 分 | 敗 | 得失点差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 15位 | 藤枝 | 16 | 14 | 3 | 7 | 4 | +1 |
| 16位 | 山形 | 16 | 14 | 5 | 1 | 8 | -1 |
| 17位 | 八戸 | 14 | 14 | 4 | 2 | 8 | -13 |
| 18位 | 栃木C | 12 | 14 | 3 | 3 | 8 | -4 |
| 19位 | 今治 | 12 | 14 | 3 | 3 | 8 | -11 |
| 20位 | 甲府 | 12 | 14 | 3 | 3 | 8 | -17 |
(出典:スポーツナビ J2順位表 2026/10/31時点)
18位栃木C、19位今治、20位甲府が同じ勝ち点12。
17位八戸までわずか2ポイント差。15位藤枝まで4ポイント差。
つまり、1勝すれば景色がガラッと変わる。
まさに魔境のリーグだ。
リーグは38試合制で、まだ14試合が終わったばかり。残り24試合ある。
勝ち点に換算すれば最大72ポイントが残っている。
今の4ポイント差がどれだけ小さいか、わかるだろう。
心理学でいう「正常性バイアス」がここで働く。
「順位が悪い=もうダメだ」と現状を固定的に捉えてしまう。
でもシーズンの3分の1が終わった段階で、4ポイント差は誤差の範囲だ。
まとめ

| 項目 | 現状 | 目標 |
|---|---|---|
| 攻撃回数 | リーグ6位(121.7回) | 維持 |
| クロスCBP | リーグ2位(28.17) | 維持+精度向上 |
| シュート成功率 | 8.6%(13位) | 10%以上 |
| 被ゴール | 1.9(19位) | 1.5以下 |
| セットプレー失点割合 | 26.9% | 15%以下 |
今治のサッカーには可能性がある。
データがそれを証明している。
攻撃回数リーグ6位、クロスCBPリーグ2位、エジガル ジュニオは得点ランキング1位タイ。
この攻撃力を持ちながら19位にいるのは、守備の課題が勝ち点を削っているからに過ぎない。
甲府戦の保持率60%、シュート20本は、久保山監督が就任してから積み上げてきた「形」の再現性がある具体的なプレーだ。
森晃太のクロス、梶浦勇輝の得点、後半からの中井卓大とのパスワーク。すべてがつながり始めている。
降格争いの順位表だけ見れば不安になる。
でも1勝すれば順位が一気に変わる世界だ。
今治に足りないのは「内容」じゃない。「結果」を手にするための少しの自信だ。
あなたの参考になればうれしい。
Just do it

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