【J2第14節レビュー】FC今治vs甲府|データを冷静に俯瞰すると可能性しかない

Jリーグ分析

19位のチームが、90分間で20本のシュートを放った。

保持率60%。枠内シュート5本。コーナーキック8本。

これは上位チームの数字じゃない。降格圏にいるFC今治の数字だ。

結果は1-1の引き分け。
勝ち点3を手にできなかった悔しさはある。

でも、この試合のデータを見れば、今治のサッカーが確実に「強さ」に近づいていることがわかる。

僕は元プロとして10年間戦ってきた。だから断言する。順位表の数字だけ見て「やっぱりダメだ」と思っている人は、この記事を最後まで読んでほしい。

この記事を読むと、以下のことがわかる。

  • 今治が甲府戦で見せた「本物のポゼッション」の正体
  • 久保山体制で積み上がっている「形」の具体的な中身
  • 降格争いの順位表を冷静に読み解く方法

逆に、読まないとどうなるか。数字だけを見て不安に飲まれ、チームが確実に成長している事実を見逃す。それは一番もったいない。


試合データ:今治が「量と質」で殴った90分

まず、この試合のスタッツを見てほしい。

項目FC今治ヴァンフォーレ甲府
スコア11
保持率60%40%
シュート205
枠内シュート52
パス(成功率)484(77.1%)335(69%)
CK86
FK139
イエローカード02

(出典:スポーツナビ)

  • シュート20本対5本。4倍の差だ。
  • パス成功率も77.1%対69%

今治が試合を完全に支配していたことがデータではっきりと出ている。

ポゼッション60%という数字だけなら「ボールを回していただけ」と言われることもある。でもシュート20本という数字が、それが「本物のポゼッション」だったことを証明している。

ボールを持つだけでシュートを打てないチームは山ほどある。

心理学では「努力の錯覚」と呼ばれる現象だ。

「やっている感」だけで成果が出ない状態。

でも今治のこの試合は違う。
ポゼッションがちゃんと攻撃に変換されている。


シーズンデータが裏付ける「今治の攻撃力」

これは甲府戦だけのことではない。

シーズン全体のデータを見ると、今治の攻撃力がリーグ上位にあることがわかる。

指標FC今治リーグ順位リーグ平均
攻撃回数121.7回6位119.0回
チャンス構築率11.0%10位ー
シュート13.4本11位13.9本
ゴール1.211位1.3
クロスCBP28.172位ー
直接FK12.9本1位10.9本

(出典:Football LAB 2026/27シーズンサマリー)

攻撃回数リーグ6位、クロスのチャンスビルディングポイントがリーグ2位。

これは「ただボールを持っているだけのチーム」の数字ではでない。

  • ちなみにエジガル ジュニオは7ゴールでJ2得点ランキング1位タイ。

19位のチームにJ2トップスコアラーがいる。

この事実だけでも、今治の攻撃が本物だとわかるはずだ。


守備データの現実:攻撃力と守備力のギャップ

ただし、ここからが今治の課題だ。

指標FC今治リーグ順位
被シュート16.0本17位
被ゴール1.919位
被シュート成功率12.0%18位
クリア30.5回3位

(出典:Football LAB 2026/27シーズンサマリー)

被ゴール1.9はリーグ19位。

攻撃はリーグ上位なのに、守備はリーグ下位。
このギャップが勝ち点を削っている。

ただし注目すべきは「クリア30.5回(3位)」だ。

  • 守備の意識がないわけではない。
  • むしろ体を張って守る場面は多い。

問題は「その前の段階」——ポジショニングとマーキングで防げるはずのシーンで後手に回っている可能性がある。


この試合で見えた「3つの強み」

森晃太の質的優位性

森晃太はこの試合もパフォーマンスは圧巻だった。

項目数値
シュート3本(枠内1本)
ドリブル成功率80%(8/10)
クロス8本
アシスト1(梶浦の同点ゴール)
パス35本(68.6%)

(出典:スポーツナビ)

ドリブル10回で成功率80%。これは異常な数字だ。

森のシーズン全体の攻撃チャンスビルディングポイントは20.45でチームトップ。

クロスCBPは8.63で、今治のクロスCBPリーグ2位を一人で支えている。

梶浦の同点ゴールも、森が右サイドから仕掛けてクロスを上げたところに梶浦がファーで合わせた形だった。

左から崩して右の森で仕留める。
久保山体制が目指すサッカーの「形」が再現性ある形ででた。

僕も現役時代、チームの形が出始める瞬間を何度か経験した。

「このタイミングでここにボールが来る」という共通認識がピッチ上でつながる感覚。

森と梶浦のゴールには、その匂いがした。

成長②:中井卓大(ピピ)の投入が「ギアを上げた」

後半開始から投入された中井卓大(ピピ)のスタッツも興味深い。

項目数値
パス44本(77.3%)
ATサード(成功率)17本(82.4%)
こぼれ球奪取2

(出典:スポーツナビ)

後半だけでパス44本。ATサード(アタッキングサードでのパス)17本成功率82.4%。

これは後半の攻撃を完全にコントロールしていたことを意味する。

  • 同じく後半から入った柴野快仁もパス20本(成功率90%)、ATサード9本(88.9%)。
  • この2人の交代が、後半の攻勢のスイッチになった。

後半0分から2人を同時に入れたのは、久保山監督の明確な意思だ。

「このメンバーで勝ちに行く」という設計が見える明確な采配だった。

成長③:梶浦勇輝の「殻を破る一撃」

同点ゴールを決めた梶浦勇輝のスタッツも光る。

項目数値
シュート4本(枠内2本)
得点1
こぼれ球奪取4

(出典:スポーツナビ)

シュート4本、こぼれ球奪取4。

ボランチのポジションでこの数字を出すのは、前への推進力がある証拠。

梶浦はシーズン通算2ゴール。
ゴール期待値0.872に対して2得点で期待値を上回っている。

「ここぞ」という場面で決められる選手は、チームの勝ち点を左右する。


甲府の「しぶとさ」:データで読むGK東ジョンの壁

この試合、今治が勝てなかった最大の理由は甲府のGK東ジョンだ。

項目東ジョン
被枠内シュート5本
セーブ率80%

(出典:スポーツナビ)

5本の枠内シュートのうち4本を止めた。
今治が20本シュートを打って1点しか取れなかった背景には、この壁がある。

甲府全体を見ると、KAGI(攻撃の質を測る指標)がリーグ4位という興味深いデータがある。

少ないチャンスでも質の高い攻撃を作れるチーム。

甲府の先制点もまさにそれで、野澤のシュートをGK立川がはじいたところを武井成豪が押し込んだ。

こぼれ球への反応、ゴール前の嗅覚。
シュートわずか5本で1点を取る甲府の効率の良さは脅威だった。

甲府サポーターにとってもこの試合は「勝ち点3を失った」感覚だろう。

先制した展開で追いつかれた。

でも野澤、小出悠太、遠藤光のDF陣が体を張り、タックルとクリアで今治の猛攻を耐えた時間帯は確実にあった。

甲府は甲府で、戦えるチームになりつつある。


失点シーンから学ぶ

今治の唯一の失点は、
セットプレーの流れから生まれたこぼれ球だった。

今治のシーズン失点パターンを見ると、構造的な課題が浮かぶ。

失点パターン失点数割合
クロスから830.8%
セットプレーから726.9%
こぼれ球から519.2%
スルーパスから311.5%
PK13.8%

(出典:Football LAB 2026/27シーズンサマリー)

クロスとセットプレーで全失点の57.7%を占める。

この試合の失点もまさにその形だった。

うまくいっていないチームには「なんでそこで失点するの?」という試合が続く。

僕もプロ時代に経験した。流れが良い時間帯に、ワンチャンスで失点する。

  • あの「嘘でしょ?」という感覚は、選手にとって精神的にきつい。

でもこれは「メンタルの問題」で片づけてはダメだ。

セットプレー時のマーキングとセカンドボールの処理という「構造の問題」だ。

構造の問題は、練習で改善できる。


降格争いの順位表を「冷静に」読み解く

最後に、降格争いの現実を見てほしい。でもパニックにならないでほしい。

順位チーム勝点試合勝分敗得失点差
15位藤枝1614374+1
16位山形1614518-1
17位八戸1414428-13
18位栃木C1214338-4
19位今治1214338-11
20位甲府1214338-17

(出典:スポーツナビ J2順位表 2026/10/31時点)

18位栃木C、19位今治、20位甲府が同じ勝ち点12。

17位八戸までわずか2ポイント差。15位藤枝まで4ポイント差。

つまり、1勝すれば景色がガラッと変わる。

まさに魔境のリーグだ。

リーグは38試合制で、まだ14試合が終わったばかり。残り24試合ある。

勝ち点に換算すれば最大72ポイントが残っている。
今の4ポイント差がどれだけ小さいか、わかるだろう。

心理学でいう「正常性バイアス」がここで働く。

「順位が悪い=もうダメだ」と現状を固定的に捉えてしまう。

でもシーズンの3分の1が終わった段階で、4ポイント差は誤差の範囲だ。


まとめ

項目現状目標
攻撃回数リーグ6位(121.7回)維持
クロスCBPリーグ2位(28.17)維持+精度向上
シュート成功率8.6%(13位)10%以上
被ゴール1.9(19位)1.5以下
セットプレー失点割合26.9%15%以下

今治のサッカーには可能性がある。

データがそれを証明している。

攻撃回数リーグ6位、クロスCBPリーグ2位、エジガル ジュニオは得点ランキング1位タイ。

この攻撃力を持ちながら19位にいるのは、守備の課題が勝ち点を削っているからに過ぎない。

甲府戦の保持率60%、シュート20本は、久保山監督が就任してから積み上げてきた「形」の再現性がある具体的なプレーだ。

森晃太のクロス、梶浦勇輝の得点、後半からの中井卓大とのパスワーク。すべてがつながり始めている。

降格争いの順位表だけ見れば不安になる。

でも1勝すれば順位が一気に変わる世界だ。

今治に足りないのは「内容」じゃない。「結果」を手にするための少しの自信だ。

あなたの参考になればうれしい。

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