なぜコンサドーレ札幌はJ2で勝てないのか──元プロが考える「エレガントと勝つは混ぜるな危険」

Jリーグ分析

正直に言う。

コンサドーレ札幌を見ていて、胸が苦しくなる。

2024年にJ1から降格。

2025年、岩政大樹監督のもとで1年でのJ1復帰を目指すも12位で終了。

J2ワースト2位の総失点63。

そして2026年、川井健太監督を迎えた新体制でも、第4節を終えて1勝3敗の17位。

ボールは握れている。

パス数519.3本/試合はリーグ2位。

保持率54.4%はリーグ3位。

なのに、勝てない。


この状態を見て、元プロの俺が感じていることを正直に書く。

結論から言う。

札幌は「ミシャサッカー中毒」から脱却できていない。

誤解しないでほしい。

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が7年間で札幌に残したものは、間違いなく大きい。

3-4-2-1の可変システム。

攻撃時には4-1-5に変形し、
選手が絶え間なくポジションチェンジを繰り返す。

見ていて面白い。ワクワクする。

でも、あのサッカーが機能していたのは「J1の個の力」があったからだ。

高嶺朋樹は名古屋へ完全移籍した。

他にも主力が抜けている。

選手の質がJ1時代より明らかに落ちている中で、同じスタイルを貫くのは──

はっきり言って、苦しい。


数字が語る「美しいけど勝てない」現実

もう少しデータを見てみる。

パス本数リーグ2位、保持率リーグ3位。

一方で、1試合平均得点は1.3。

無失点試合はわずか1。リーグ8位。

ここに、札幌の問題が凝縮されている。

  • ボールを持てるけど、点が取れない。
  • そして、守れない。

第3節のRB大宮戦は1-4の黒星。

支配率52%、シュート数16本と札幌のほうが多いのに、4失点。

前半2点ビハインドから前がかりになり、連鎖的に失点を重ねた。

第4節の甲府戦では、CBの梅津龍之介のパスをカットされて2失点目。

自陣でリスクを取ったビルドアップが、そのまま致命傷になっている。

川井監督の鳥栖時代にも同じ構造の失点があった。

2022年J1第18節のFC東京戦では5-0で大勝しながら、
3バックの選手の縦パスをカットされて決定機を作られている。

これは偶然じゃない。

スタイルの代償だ。


俺がプロ時代に見た「エレガントと勝つ」の矛盾

ここからは、俺自身の経験を話す。

俺はFWだった。

FWに求められる一番大事な仕事は、点を取ること。

これは不変の真理だ。

でもプロの世界では、監督から「守備もしろ」と求められる。

  • 「FWでも全力で守備しないと上には行けない」

何度も言われた。

当時の俺は、その言葉をそのまま受け取っていた。

でも今ならわかる。

あれは監督が「自分のチームの失点を減らしたかった」からだ。

監督にとっては、失点が少ないほうが自分の評価が上がる。

だからFWにも守備を求める。

これは監督の立場からすれば、当然の判断だ。


でも、冷静に考えてほしい。

全く守備をしないFWを使って3失点しても4点取れるFWがいたら、そいつを使うだろう。

鹿島アントラーズのレオセアラのような選手がまさにそれだ。

決して彼が守備をしていないと言いたいわけではない。

点を取りまくる選手が、ちょっと守備もすれば評価はさらに上がる。

つまり、順序があるということだ。

FWなら、まず「点を取る力」が絶対条件。

その上に守備が乗る。

逆にはならない。


札幌の問題も、構造はまったく同じだと俺は思う。

「エレガントと勝つは、混ぜるな危険」

美しいサッカーを目指すこと自体は悪くない。

でも、美しさと勝利の両立には、前提条件がある。

  • 個人戦術のレベルが高いこと。
  • 守備の整理ができていること。

この2つが揃って初めて、エレガントに勝てるサッカーが成り立つ。


個人戦術と守備の整理──足りないピースは何か

心理学に「認知的負荷理論」という考え方がある。

人間が一度に処理できる情報量には限界がある。

処理能力を超えると、判断が遅れ、ミスが増える。

ミシャ式のサッカー、そして川井監督のサッカーは、選手に求める認知的負荷が極めて高い。

常にポジションチェンジ。

常に流動的な動き。

常にボールを保持しながら前進する。

J1にいた頃は、その負荷に耐えられる「個」がいた。

高嶺朋樹のように、ボランチでありながら10ゴールを決められる選手。

自分で判断し、自分でプレーを選択できる個人戦術の高い選手たち。

でも今、その「個」が抜けている。

若いCBの梅津龍之介は22歳、西野奨太も22歳。

伸びしろはある。

でも今の段階で、ハイリスクなビルドアップの負荷を背負いながらミスなく遂行するのは──

認知的負荷が、キャパシティを超えている。


もうひとつ。

守備の整理の話をする。

ポゼッションサッカーの落とし穴は、奪われた瞬間にある。

ボールを保持している=選手が攻撃的なポジションに上がっている。

そこで奪われたら、一気にカウンターを食らう。

これを防ぐには、2つの武器がいる。

① 奪い返すためのポジショニング強度

ボールを奪われた直後に、すぐ奪い返す。

そのためには、攻撃しながらも「奪われた時」を想定したポジションを取っていなければならない。

攻撃の美しさに酔って、全員が前がかりになった瞬間──終わる。

② 裏をケアするGKの質的優位

ハイラインを敷くなら、GKは広大なスペースをカバーする能力が必要だ。

相手のロングボールに対して飛び出す判断力。

1対1を止める力。

フィールドプレーヤーとしてのビルドアップ能力。

大宮戦では、GK田川知樹の飛び出しが失点の一因になった。

ハイリスクなサッカーを支えるには、最後の砦に質的優位が求められる。


プロで学んだ「自分の頭で考える」ということ

俺がプロ生活で骨身に染みたことがある。

みんな自分が一番かわいい。

監督も、コーチも、トレーナーも、先輩も。

本当に自分のことを考えてくれる人は「常にそうでいられる人がいない」。

余裕がなくなれば、周りを救えなくなる。

これはサッカーの世界だけの話じゃない。

会社でも、人間関係でも、同じだ。


行動経済学で「現状維持バイアス」という概念がある。

人は今のやり方を変えることに、強い抵抗を感じる。

たとえそれが最適でなくても、
「今までうまくいっていたから」という理由で変えられない。

札幌にとってのミシャ式は、まさにこれではないか。

7年間やってきた。

J1で戦えた時期もあった。

あの美しいサッカーは、サポーターの誇りでもあった。

だから変えられない。

変えたくない。

でも、環境は変わった。

選手は入れ替わった。

J2という戦場は、J1とは違うルールで動いている。


川井健太監督の方向性は明確だ。

ボールを握り、主導権を持つ。

鳥栖時代からブレていない。

その姿勢は立派だと思う。

でも「ブレない」と「変えない」は違う。

芯を持ちながらも、環境に合わせてやり方を調整する。

これが本当の「戦術眼」だと、俺は思う。

サッカーも人生も同じだ。

自分のスタイルを持つことは大事だ。

でも、スタイルに固執して結果が出ないなら、何かを変えなければならない。

変えるのは、信念じゃない。

手段だ。


あなたの人生にも「ミシャ中毒」はないか

ここまで読んで、「サッカーの話でしょ?」と思った方に聞きたい。

あなたの仕事や人生に、同じことは起きていないだろうか。

「今までこのやり方でうまくいってきたから」

「このスタイルが自分だから」

そう言い聞かせて、環境が変わっているのに手段を変えられない状態。

これは誰にでも起こる。

俺も同じだった。

プロサッカー選手としてのやり方が通用しなくなった引退後、

「サッカー選手としての自分」にしがみついて、何者でもない自分に苦しんだ。

でもあの時、変えたんだ。

信念は変えなかった。

「行動で人生を変える」という芯は変えなかった。

でも手段は変えた。

人材派遣の営業をやった。

Webマーケティングの世界に飛び込んだ。

設備施工管理という、まったく違うフィールドに行った。

芯を残しながら、手段を変える。

これが「現状維持バイアス」を壊す唯一の方法だ。


まとめ──札幌に必要なのは「勇気ある変化」

コンサドーレ札幌がJ2で苦しんでいる原因を、もう一度整理する。

① 選手の質がJ1時代より落ちている

高嶺朋樹をはじめとする主力が抜け、
個の力で戦術を成り立たせることが難しくなっている。

② J2を勝てる戦術になっていない

パス本数リーグ2位、保持率リーグ3位。

でも得点は少なく、守備は崩壊する。

美しいけど勝てないサッカー。

③ ミシャ式からの脱却ができていない

7年間のスタイルが染みついている。

川井監督のサッカーも方向性は近い。

現状維持バイアスが組織に根付いている。

④ 個人戦術と守備の整理が足りない

エレガントに勝つには、奪い返すポジショニング強度と、裏をケアするGKの質的優位が不可欠。

そのピースが揃っていない。


あくまで個人的な意見だ。

結果論と言われても仕方ない。

でも、元プロとして10年間ピッチに立ってきた人間として思うことがある。

サッカーは、結局、勝たなければ意味がない。

美しいサッカーで勝つのが理想だ。

でも理想を追いかけて負け続けるなら、
それは選手にとってもサポーターにとっても、幸せじゃない。

梅津龍之介も西野奨太もまだ22歳。

これから伸びる選手たちだ。

だからこそ、「勝ちながら成長する」環境が必要だと思う。

川井監督には、ブレない芯を持ちながらも、勝つための変化を恐れないでほしい。

それは信念を曲げることじゃない。

信念を、環境に合わせて表現する方法を変えることだ。


行動しなければ、何も変わらない。

これはサッカーも、人生も同じだ。

あなたが今、何かに行き詰まっているなら。

変えるべきは信念じゃない。

手段を変える勇気を持つこと。

その一歩が、次の景色を見せてくれる。

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