今日は、こんな疑問に答えます。
こんにちは。アスリートの教養ブログ管理人のいちゃりばです。
この記事を読めば、Jリーグで繰り返されるパワハラの全体像と、なぜ起こるのかの心理メカニズム、そしてサッカー界から排除するために必要なことがわかります。
逆に、知らないまま「また問題か…」とスルーしてしまうと、
この構造は何も変わりません。
結論から言います。
Jリーグのパワハラ問題は「個人の問題」ではなく「構造の問題」です。
そして、構造を変えるには、
- 「制度」
- 「教育」
- 「経済的自立」
の3つが必要です。
【データで見る】Jリーグパワハラ問題の年表

まず、事実を整理しましょう。
ここ数年だけでも、
Jリーグではこれだけのハラスメント事案が起きています。
① 曺貴裁(チョウ・キジェ)|湘南ベルマーレ(2019年)
Jリーグのパワハラ問題で最初に大きく注目されたケースです。
選手・スタッフに対する威圧的な言動がパワハラと認定されました。
処分内容は、
しかし、約1年後にはS級ライセンスが復活。
2021年からは京都サンガFCの監督に就任しました。
ここで多くの人が思ったはずです。

え、パワハラ認定されたのに、また監督できるの?
② 永井秀樹|東京ヴェルディ(2021年)
選手やスタッフへの「人格を否定する言葉や暴言」がJリーグにパワハラ認定されました。
しかし処分はクラブに対してのみ。
けん責+罰金100万円がクラブに科されました。
理由は「すでに退職しており、Jリーグの懲罰権が及ばない」から。
辞めれば処分されない。
この事実は、制度の大きな穴を露呈しました。
③ 金明輝(キム・ミョンフィ)|サガン鳥栖→アビスパ福岡(2021年〜2026年)
これが、最も深刻な事例です。
2021年、サガン鳥栖で選手への暴行・暴言が発覚。
未成年の選手に対する行為も含まれていました。
「殺すぞ」という発言もあったと報じられています。
その後、JFAの更生プログラムを経て、
2024年にS級ライセンスが再発行されます。
そしてアビスパ福岡の監督に就任。
スタッフへの威圧的な叱責、精神的に追い込む発言。
2026年1月に契約解除。
JFAはサッカー関連活動の無期限禁止という事実上の永久追放処分を下しました。
福岡の社長も引責辞任。

問題は、なぜ更生プログラムを経た人間が再犯したのかです。
④ 黒田剛|FC町田ゼルビア(2025年)
Jリーグはけん責処分を科しました。
パワハラ認定には至りませんでしたが、「不適切な発言は許されない」と明言。
その後、監督を継続している。
この件については
以前の記事で詳しく書いています↓
⑤ 秋田豊|高知ユナイテッド(2025年)
元日本代表DFの秋田豊氏。
スタッフミーティングで
「お前ADHDだろ。病院行って来い!」と発言。
選手やスタッフがJリーグの選手会にパワハラを申し立て。
第三者委員会による調査が行われ、
2025年9月、秋田氏は辞意を表明しました。
「悪意はなかった」と本人は説明しましたが、
受け手がどう感じるかが全てです。
【JFAの統計】相談件数は増え続けている

JFAの暴力根絶相談窓口のデータを見てみましょう。
2018年:120件
2019年:243件
(暴力43件、暴言127件)
1年で約2倍に増えています。
これは「パワハラが増えた」のではなく、
つまり、以前から問題は存在していた。
ただ、表に出てこなかっただけです。

正直、10年間のプロ生活のなかで「これはおかしい」と感じる場面は何度もあった。
でも、当時は声を上げる仕組みがなかった。
なぜサッカー界でパワハラは繰り返されるのか?

結論から言います。3つの構造的な原因があります。
原因①:権威への服従(ミルグラム実験)
心理学に「ミルグラム実験」というものがあります。
1960年代に行われた実験で、
「権威者の指示であれば、人は相手に危害を加える行為すらしてしまう」
ということが証明されました。
サッカー界に置き換えてみてください。
監督は「権威者」そのものです。
選手にとって、監督は自分の出場機会を握っている人間。
だから、理不尽な指示でも従ってしまう。
おかしいと思っても、声を上げられない。
これが「権力勾配」です。
僕が現役だったとき、監督の言葉ひとつでチームの空気がガラッと変わるのを何度も目の当たりにしてきました。
原因②:勝利至上主義の免罪符
「勝てば正義」。
サッカー界では、この言葉が
パワハラの免罪符として機能してきました。
行動経済学に「ハロー効果」というものがあります。
ある一面が優れていると、
他の面も優れていると錯覚する心理バイアスです。
「このチームは強い」
↓
「だから監督の指導は正しい」
↓
「多少厳しくても結果が出ているから問題ない」
この思考回路で、
パワハラが「熱心な指導」にすり替えられてしまう。
結果を出した。だから許される。
結果と人格否定は、まったく別の話です。
原因③:更生制度の形骸化
金明輝氏のケースが、
この問題を最も象徴しています。
- サガン鳥栖でパワハラ認定
- 更生プログラム受講
- S級ライセンス再発行
- アビスパ福岡で監督就任
- 再びパワハラで契約解除
- 無期限追放
更生プログラムを受けたはずなのに、再犯した。
これは何を意味するか?
今の更生制度は「免許を返すための形式」になっている
可能性があるということです。
JFAの山本委員長も
「本当に遺憾」とコメントしています。
制度を作ること自体は正しい。
でも、制度が機能しなければ意味がない。
僕が現場で見てきたリアル

偉そうなことを言っていますが、
僕自身も「おかしい」と感じながら何もできなかった側の人間です。
理不尽なことを言われても、
「ここでクビになったら終わりだ」と思うと、口を閉じるしかなかった。

でも今思えば、「終わり」じゃなかったんですよね。
当時の僕に言いたいのは、
「黙っていることは、その構造に加担していること」
だということです。
厳しい言い方ですが、これは本音です。
サッカー界からパワハラを排除するために必要な3つのこと

理想論ではなく、現実的に効果がある方法をお伝えします。
① 制度の実効性を上げる
現状の問題点は明確です。
解決策としては、以下が考えられます。
・ライセンスに紐づく処分制度
(退職しても、ライセンス停止で指導活動を制限できる)
・更生プログラムの第三者評価
(本人の自己申告ではなく、心理専門家による継続的な評価を義務化する)
・匿名通報制度の強化
(JFAの相談窓口はあるが、選手が安心して使えるかは別問題)
Jリーグは2022年1月18日、
「スポーツ現場におけるハラスメントとの決別宣言」をnoteで公開した。
宣言は素晴らしい。
でも、宣言だけでは行動は変わりません。
制度に「歯」をつけること。これが最優先になる。
② 指導者教育のアップデート
パワハラを起こす指導者の多くは、自分がパワハラをしている自覚がない。
心理学でいう「ダニング=クルーガー効果」に近い状態かもしれない。
だからこそ、
指導者ライセンスの更新時に
ハラスメント研修を必須化することが必要です。
実際の事例をもとにしたロールプレイや、選手側の視点を体験するワークショップ。
「自分がやられる側」を疑似体験して、はじめて気づくことがある。
③ 選手の経済的自立
これは、以前の記事でも書きましたが本当に大事なことなので改めて言います。
パワハラが成立する根本原因のひとつは、
選手が経済的に監督(クラブ)に依存していることです。
「クビになったら生活できない」
という恐怖があるから、声を上げられない。
逆に言えば、
経済的な余裕があれば、「おかしい」と言える勇気が生まれる。
僕自身、現役時代から資産形成を意識していました。
「いつでも辞められる」という状態を作ることが、
実は最強のパワハラ対策です。
Jリーグの理念を、もう一度
Jリーグの理念には、こう書かれています。
・日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進
Jリーグ公式サイト
・豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与
・国際社会における交流及び親善への貢献
「国民の心身の健全な発達への寄与」。
選手もスタッフも国民です。
その人たちの心身を壊す指導が、
「勝ったから」で許される世界は、この理念と完全に矛盾しています。
Jリーグがに出した「ハラスメントとの決別宣言」。
あの宣言を、ただの文書で終わらせてはいけない。
ファンも、選手も、指導者も、
「おかしいことはおかしい」と言い続けること。
それが、サッカー界を変える第一歩になる。
まとめ:パワハラは「個人の資質」ではなく「構造の問題」
Jリーグのパワハラは「個人の資質」ではなく「構造の問題」。
- 2019年から2026年まで、
少なくとも5件の重大事案が発生 - 権威への服従(ミルグラム実験)
- 勝利至上主義(ハロー効果)
- 更生制度の形骸化が3大原因
- JFAの相談件数は2018年の120件から
2019年に243件へ倍増 - 金明輝氏のケースは、
更生プログラム後の再犯という制度の限界を露呈 - 排除に必要なのは
「制度の実効性」「指導者教育」「選手の経済的自立」
この問題に「関心を持ち続ける」こと
パワハラが起きるたびに炎上して、数週間で忘れる。
その繰り返しが、構造を温存させています。
「また起きたか」ではなく、
「なぜまた起きたのか」を考え続けてください。
知識を得たら、アウトプットしてほしい。

こういう問題があるんだよ!
と誰かに伝えること。
それだけで、社会の目が一つ増える。
社会の目が増えれば、構造は変わりやすくなります。
サッカーは、人を育てるスポーツです。
人を壊すスポーツにしてはいけない。
僕はそう信じています。
Just do it



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