2026年9月17日、森保一監督がW杯後初の日本代表メンバー31人を発表した。
ウルグアイ戦(9月24日)、ベネズエラ戦(9月28日)、そしてキリンカップに臨むメンバーだ。
松木玖生、谷村海那、中野就斗、齋藤俊輔——4人の初招集が話題になった。
でも、俺が一番気になったのはそこではない。
小川航基の名前がなかったこと。
W杯に出た男が、なぜ外れたのか。
しかも、つい先月NECナイメヘンから町田ゼルビアに完全移籍したばかり。
北中米W杯では、もっとも得点の可能性をもった選手だった。
「W杯に出るため、活躍するために帰ってきた」と自ら語った男が、帰国して1ヶ月もたたずに代表から外れた。
元FWとして、この状況を冷静に、でも温度を持って考えたい。
小川航基のキャリアをデータで振り返る
まず事実を整理する。
小川航基は1997年生まれの29歳。身長186cm、右利きのストライカーだ。
ジュビロ磐田でプロキャリアをスタートし、水戸への期限付き移籍、横浜FCでのJ2得点王(41試合26得点)を経て、2023年にオランダのNECナイメヘンへ移籍した。
NEC時代の成績
| シーズン | リーグ | 出場 | 得点 |
|---|---|---|---|
| 2023-24 | エールディヴィジ | 18試合 | 7得点 |
| 2024-25 | エールディヴィジ | 24試合 | 7得点 |
| 2025-26 | エールディヴィジ | 26試合 | 8得点 |
| 合計 | 68試合 | 22得点 |
3シーズンで68試合22得点。
悪い数字じゃない。でも、正直に言うと「エース」と呼ばれるには物足りない数字でもある。
同じエールディヴィジで上田綺世がフェイエノールトで25得点の得点王に輝いたことを考えると、リーグ内での立ち位置がはっきり見える。
それでも小川は実力を認められ、2026年のW杯メンバー26人に選ばれた。
W杯2026での日本代表と小川の立ち位置
日本代表はW杯2026で以下の結果を残した。
| 試合 | 対戦相手 | スコア | 結果 |
|---|---|---|---|
| GS第1戦 | オランダ | 2-2 | 引き分け |
| GS第2戦 | チュニジア | 4-0 | 勝利 |
| GS第3戦 | スウェーデン | 1-1 | 引き分け |
| ラウンド32 | ブラジル | 1-2 | 敗退 |
グループF2位で通過したが、ラウンド32でブラジルに1-2で敗れた。
悲願のベスト8にはまたも届かなかった。
小川はこの大会で途中出場。
しかし、もっとも期待を感じるストライカーであったことは間違えなった。
「悔しい」という言葉の裏に、ストライカーとしての葛藤があったはずだ。
その気持ちが痛いほどわかる。
なぜ小川航基は代表から外れたのか
森保監督は記者会見でこう言った。
つまり、外したくて外したわけじゃない。
報道によると、小川の落選には「今夏の移籍も考慮した」という説明がある。
8月24日にNECから町田ゼルビアへの完全移籍が発表された。移籍後はわずか2試合の出場。川崎フロンターレ戦では途中出場から2得点を叩き込み、逆転勝利に貢献している。
結果は出している。
でも、代表メンバー発表の9月17日時点では、町田での出場がたった2試合。
新しいチームに馴染む途中という判断が働いたのだと思う。
W杯メンバーから外れた5人
| 選手名 | 所属 | 落選の理由 |
|---|---|---|
| 長友佑都 | FC東京 | 40歳・世代交代 |
| 谷口彰悟 | シント・トロイデン | 負傷 |
| 菅原由勢 | カリアリ | 今夏の移籍を考慮 |
| 小川航基 | FC町田ゼルビア | 今夏の移籍を考慮 |
| 町野修斗 | ボルシアMG | ― |
菅原由勢も同じ理由で外れている。
移籍直後の選手を外す判断は、小川だけに向けられたものじゃない。
代わりに選ばれた谷村海那という男
小川の代わり——正確には「入れ替えではない」と監督は言ったが——FWとして初招集されたのが、横浜F・マリノスの谷村海那(28歳)だ。
この選手の経歴が面白い。
JFL(いわきFC)→ J3 → J2 → J1(横浜F・マリノス)→ 日本代表。
すべてのカテゴリーを駆け上がって代表に辿り着いた。
2026シーズンは7試合6得点。日本人トップタイの得点数を叩き出している。
森保監督の言葉は明確だった。
ここが重要だ。
「Jリーグで結果を出している選手」が選ばれた。
じゃあ、Jリーグで結果を出すことは、代表への道にならないのか?
答えはNOだ。谷村が証明している。
問題は「Jリーグにいること」じゃない。
「今、結果を出しているかどうか」にある。
数字が突きつける「海外組」の現実
ただし、現実も直視しなきゃいけない。
W杯2026の日本代表メンバー26人の内訳はこうだった。
| 区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 海外組 | 23人 | 88% |
| 国内組 | 3人 | 12% |
国内組はGK2人(早川友基・大迫敬介)とDF1人(長友佑都)。
攻撃的なポジションで国内組はゼロ。
これはW杯史上最多の海外組比率だ。
そして今回の9月メンバーでも、FW・攻撃陣はほぼ海外組で構成されている。
| 選手名 | 所属 | リーグ |
|---|---|---|
| 上田綺世 | リール | リーグアン(フランス) |
| 前田大然 | イプスウィッチ | プレミアリーグ(イングランド) |
| 後藤啓介 | フライブルク | ブンデスリーガ(ドイツ) |
| 塩貝健人 | ヴォルフスブルク | ブンデスリーガ2部(ドイツ) |
| 久保建英 | レアル・ソシエダ | ラ・リーガ(スペイン) |
| 鈴木唯人 | フライブルク | ブンデスリーガ(ドイツ) |
| 谷村海那 | 横浜F・マリノス | J1(日本) |
谷村だけがJ1。
つまり、Jリーグから代表FWに選ばれるには「圧倒的な結果」が必要だということ。
7試合6得点——谷村にはそれがあった。
小川には町田での2試合2得点。数字は悪くないが、サンプルが少なすぎた。
元FWとして思うこと——環境選びの怖さ
ここからは俺の経験も踏まえて書く。
小川航基は町田への移籍理由をこう語っている。
「W杯に出るため、活躍するために帰ってきた」
「W杯に1番近いところを選びました」
この言葉、俺はすごくわかる。
プロサッカー選手にとって「どこでプレーするか」は、そのまま自分の人生を決める選択だ。
小川はオランダで3シーズン、68試合22得点。決して失敗じゃない。
でも「欧州での評価が得られなかった」と分析してJリーグに戻ってきた。
これは勇気のいる決断だ。
ヨーロッパにしがみつくこともできた。
でも彼は「4年後のW杯に一番近い場所」として町田を選んだ。
ここに「行動×戦略」がある。
ただ、皮肉なことに——
帰国して1ヶ月で、代表から外れた。
小川がヨーロッパに残っていたら代表に選ばれていたか? 正直、わからない。
でも「Jリーグに戻ったから外れた」と感じる人は多いと思う。
実際はそうじゃない。
「Jリーグに戻ったら代表から遠ざかる」という印象が、次にヨーロッパで悩む若い選手の判断を歪める。
これがまさに心理学でいう「アンカリング効果」——最初に与えられた情報が判断基準になってしまう現象だ。
「小川がJリーグに戻って外れた」という事実が、「Jリーグ=代表から遠い」というアンカー(基準点)になってしまう。
でも谷村海那を見てほしい。
JFLからJ3、J2、J1と駆け上がって、28歳で代表初招集。全部Jリーグだ。
環境が問題なんじゃない。その環境で何を証明するかが問題だ。
まとめ——小川航基の落選が教えてくれること
小川航基が代表から外れた理由は、Jリーグに戻ったからではない。
移籍直後で評価するサンプルが足りなかった。それだけだ。
一方で、日本代表の攻撃陣が海外組88%という現実もある。
Jリーグから代表FWに選ばれるには、谷村海那のように「圧倒的な結果」が必要だということも事実だ。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 落選の直接理由 | 移籍直後の適応期間を考慮 |
| Jリーグ=不利? | NO。谷村海那(J1→代表)が証明 |
| 必要な条件 | 「圧倒的な結果」を出すこと |
| 小川の今後 | 町田で得点量産→次回招集の可能性大 |
| 本質 | 環境ではなく、そこで何を証明するか |
小川航基の勝負はここからだ。
そして、この話は俺たちの人生にもそのまま当てはまる。
環境を変える勇気。変えた先で結果を出す覚悟。
どっちが欠けてもダメだ。
行動だけでは足りない。行動×戦略の掛け算。
小川航基が町田で何を証明するか、俺は一人のサッカー人として見守りたい。

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