300万円の投資詐欺に遭った俺が、一番キレたのは自分自身だった

お金・投資

サッカー選手だった頃、ずっと感じていたことがある。

監督やオーナーの顔色をうかがいながらプレーする自分が嫌だった。

プロサッカー選手と聞くと華やかに聞こえるかもしれない。

でも現実は、監督の起用方針ひとつで試合に出られるかどうかが決まる。

チームの方針に合わなければ干される。
意見を言えば立場が危うくなる。

選手である前に、組織の中の一人だった。

経済的に自立していれば、忖度に怯えなくていい。

自分の信念を持ってサッカーができる。

そう思っていた。でも現実には、サッカーの収入だけで自由と言える状態にはなかった。

この焦りが、すべての始まりだった。

後にサッカー選手を引退して、会社員になった。すると今度はもっと強く感じた。

会社員おかしくないか。

決められた時間に出勤して、言われたことをやって、月末に決まった額が振り込まれる。

どんなに頑張っても、給料はかわらない。
残業で稼ごうとするひとが多いことにも違和感を感じた。

それ自体が悪いとは思わない。
でも、サッカー選手時代よりさらに自由がない。

この仕組みの中に一生身を置かなきゃいけないのかと思った瞬間、背筋が冷たくなった。

おかしいと思っているのに、抜け出せない。

経済的に自由じゃないから。

これが俺にとって何よりの絶望だった。


やるしかなかった

絶望したからって、立ち止まってるわけにはいかない。

家族もいる。子どもたちもいる。

だから動いた。

投資を始めた。副業も始めた。

サッカーしかしてこなかった俺が、世の中の仕組みなんてろくに知らないまま、とにかく現状を変えたくて動き回っていた。

今振り返ると、あの頃の俺は「焦り」の塊だったと思う。

サッカー選手の頃から抱えていた「経済的に自立したい」という思いが、

早く結果を出したい。

早く自由になりたい。

その焦りが、判断を曇らせていた。


スカイプレミアム——300万円が消えた

コロナ禍のことだ。

知人の紹介で「スカイプレミアム」という投資の話が来た。

スカイプレミアムは、表向きは「会員制のライフスタイルクラブ」だった。

ワインや旅行、ホテルの優待サービスを提供する高級感のある会員組織。

まずはそこに入会する。

そして会員になった後、「選ばれた人だけに紹介できる特別な投資案件がある」と持ちかけられる。

それが「ライオンプレミアム」と呼ばれるFX投資商品だった。

「年利20〜30%」「10年近い運用実績がある」「いつでも出金できる」

そう説明された。
「日本人は投資に対する意識が低い。銀行から借りてでも入れる価値がある」とまで言う人間もいた。

当時の俺は「これで変われるかもしれない」と思ってしまった。

300万円。簡単に出せる額じゃない。

それでも俺は突っ込んだ。

結果、全部消えた。


今思えば、おかしな点だらけだった

ここが一番悔しいところだ。冷静に振り返ると、赤信号はいくつも点滅していた。

自分の証券口座ではなく、他人の口座に現金を振り込む。

本来、投資というのは自分名義の証券口座に入金して、そこから運用するものだ。

自分の口座にある限り、お金の権利は自分にある。

でもスカイプレミアムでは違った。

「ライオン」という運用会社の口座に直接振り込むように言われた。

今ならわかる。他人名義の口座に金を振り込むということは、その瞬間にお金の権利を相手に渡す行為と同じだ。法人だろうが個人だろうが関係ない。

自分の手を離れた金は、もう自分のものじゃない。

なのに当時の俺は、言われるがまま振り込んだ。「なんで自分の口座じゃないんだろう」と、一瞬でも立ち止まるべきだった。

「エージェント」と呼ばれる紹介者に手数料が入る仕組み。

スカイプレミアムには500人以上の「エージェント」と呼ばれる勧誘員がいた。

人を紹介すればするほど、エージェントに報酬が入る。

つまり、紹介する側にはあなたの資産を増やす動機じゃなく、あなたに金を出させる動機がある。

この構造を冷静に見れば、誰のための投資なのかは明らかだ。

実際にはFX運用すらされていなかった。

後になってわかったことだが、集めた金でまともにFX運用なんてされていなかった。

先に入った人への配当を、後から入った人の金で回すポンジスキーム。

被害総額は1350億円。

被害者は約2万6000人。俺はその一人だった。

どれも、知識があれば気づけたはずのことだった。


連絡が取れなくなった日

ある日を境に、エージェントと連絡が取れなくなった。

ようやく繋がったと思ったら、「自分も被害者だ」と言い張る。

心底むかついた。怒りで手が震えた。

裁判も考えた。実際に調べもした。

でも調べれば調べるほど、仮に勝っても金は返ってこない現実が見えてきた。

スカイプレミアムの代表は逮捕されたが、金が戻ってくるかどうかは別の話だ。

300万円は、もう戻らない。


一番腹が立ったのは、詐欺師じゃなかった

ここからが、この記事で一番伝えたいことだ。

もちろん詐欺師には今でも腹が立つ。

連絡が取れなくなって、被害者面する人間を許せる気持ちはない。

でも、時間が経って冷静になった時、俺が一番キレたのは自分自身だった。

自分の口座じゃなく他人の口座への振り込み。
エージェントに手数料が入る仕組み。
年利20〜30%なんて異常な数字。

どれも「ん?」と引っかかるポイントだったはずだ。

でも当時の俺はそれに気づけなかった。

気づく力がなかった。

無知だった。

サッカーしかしてこなかった。
お金のこと、投資のこと、世の中の仕組み。何も知らなかった。

知らないくせに、焦りだけで300万円を差し出した。

詐欺師が悪いのは当然だ。でも、無知な自分がそこに飛び込んだのも事実だ。

この事実から目を逸らしたくなかった。


血肉に変えるしかない

返ってこない300万円のことを、ずっと悔やんでいても何も変わらない。

裁判をしても返ってこない。詐欺師を恨み続けても返ってこない。

じゃあ、この経験をどうするか。

俺は一つだけ決めた。

この300万円を、自分の血肉に変える。

授業料だと思うことにした——なんて綺麗な話じゃない。正直、今でもむかつく。

でも、あの経験があったから俺は変わった。それだけは間違いない。

サッカーしかしてこなかった俺が、初めて「学び」と本気で向き合った。

本を読み始めた。『金持ち父さん貧乏父さん』『7つの習慣』。

お金の仕組み、自分の頭で考える力、人生を設計するという発想。

全部、あの300万円を失った後に出会ったものだ。

もし詐欺に遭っていなかったら、俺は今でも無知なまま焦り続けていたかもしれない。

もっと大きな額を失っていたかもしれない。


怒りの矛先を変えた瞬間、人は変われる

俺はサッカー選手時代、監督に干された時期がある。
試合に出られない。メンバーにも入れない。

あの時も腹が立った。「なんで俺を使わないんだ」と。

でも結局、ピッチに立てるかどうかを決めるのは自分自身の実力だった。

監督のせいにしている間は、何も変わらなかった。
矢印を自分に向けた瞬間から、練習の質が変わった。

投資詐欺の時も同じだった。

詐欺師に怒りを向けている間は、ただの被害者だった。

でも「なんで自分はこんなものに引っかかったんだ」と、

自分の無知に矢印を向けた瞬間、俺は被害者から学ぶ人間に変わった。

怒りの矛先を変えること。

これは俺の人生で何度も転機をつくってくれた考え方だ。


自由は、知ることから始まる

経済的自由を目指して動き出したこと自体は間違ってなかったと思う。

ただ、知らないまま動くのは危険だ。

今の俺は、投資もするし副業もしている。ブログも書いている。会社員もしている。

一つに依存しない生き方を選んでいる。

でもこの全部の土台にあるのは、「自分で学ぶ」ということだ。

人に任せない。人の話を鵜呑みにしない。

自分で調べて、自分で考えて、自分で決める。

誰かが「年利20%」と言ったら、まず疑う。

自分の証券口座じゃなく他人の口座に振り込めと言われたら、

それは自分のお金の権利を手放す行為だと気づく。

紹介者に手数料が入る仕組みなら、それは誰のための投資なのかを考える。

この当たり前のことを、俺は300万円で学んだ。


最後に

もしこれを読んでいるあなたが、
今の生活に「おかしくないか」と感じているなら、その感覚は正しいと思う。

その違和感を無視しないでほしい。

ただ、焦って動く前に一つだけ。

まず学ぶことから始めてほしい。本でもいい。人の話を聞くのでもいい。

自分の頭で考えながら動くことが大事だと。

俺は300万円失って、ようやくそれに気づいた。

あなたには、俺と同じ授業料を払ってほしくない。

参考になれば嬉しい。

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