大学4年の時、俺はほとんど途中出場だった。
スタメンで出られたのは数えるほど。
ほとんどが途中から出る立場だった。
スカウトの目に留まるような状況じゃない。
途中出場の選手を見に来るJクラブなんてない。
普通に考えたら、ここからプロになるなんて無理だ。
でも俺は、プロになりたかった。
心の底から、そう思っていた。
「根拠のない自信」には、根拠があった

冷静に考えれば、4年生の時の俺にはプロになれる根拠なんてなかった。
途中出場ばかり。スカウトの目に留まったこともない。
でも、「俺ならできる」という気持ちだけはあった。
なぜか。
実は3年の時、俺はほぼスタメンで試合に出ていた。
チームの中で自分のポジションを掴んで、コンスタントに出場していた。
それが4年になって、監督が代わった。
起用方針が変わり、俺は出られなくなった。
当時は正直、納得できていなかったと思う。「なんで俺が出られないんだ」と。
でも今振り返ると、この納得できていない
気持ちがリバウンドメンタルの追い風になっていた。
3年であれだけやれていたんだ。
実力がないわけじゃない。
環境が変わっただけだ。
——そう思えたからこそ、「俺ならできる」という自信が消えなかった。
根拠のない自信と言ったけど、正確に言えば、3年の時の経験が心の奥で自分を支えていた。
表面上は根拠がないように見えても、
自分の中には「やれる」と感じた記憶がちゃんとあった。
この自信がなかったら、俺はたぶん就職活動を始めて、普通に社会人になっていたと思う。
自分を信じられる経験が一つでもあるなら、それを手放すな。
それが原動力になる。
スカウトがないなら、自分で売り込むしかない

プロになりたい。でもスカウトは来ない。
じゃあどうするか。
答えはシンプルだった。自分から行くしかない。
俺は知り合いのツテを頼って、Jクラブの練習に参加させてもらう方法を探した。
いわゆる「営業」だ。
サッカー選手になるために営業なんて、と思うかもしれない。
でも、待っていても誰も見つけてくれないなら、
自分から見つけてもらいに行くしかない。
結果的に、3つのJクラブに練習参加させてもらうことができた。
どうにかこぎつけた。
頭を下げて、お願いして、チャンスをもらった。
プライドなんて捨てた。
プロになりたいという気持ちの前では、プライドなんて何の役にも立たない。
ただ全力でやるだけじゃ、足りない

ここが一番伝えたいところだ。
練習参加のチャンスをもらった。
普通なら「とにかく全力でアピールしよう」と考えるだろう。
必死にボールを追いかけて、
全力で走って、自分の実力を見せつける。
俺も最初はそう思っていた。
でも、1つ目のクラブに練習参加をして違和感を感じた。
練習参加の期間はわずか1週間。
たった1週間で、数十人いる選手の中から自分を覚えてもらわなきゃいけない。ということだ。
全力でプレーするのは当たり前だ。
でもそれだけじゃ、他の練習参加の選手と同じで埋もれてしまう。
覚えてもらわなきゃ、意味がない。
俺は戦略を立てた。
まずは「知ってもらう」こと。これが最優先だった。
名前を覚えてもらう。
顔を覚えてもらう。
「あいつ誰だっけ?」じゃなく、
「ああ、あいつか」と思ってもらえる存在になること。
だから俺は、ピッチの上だけじゃなく、ピッチの外でも印象に残ることを意識した。
そして、一発芸をやった。
笑われるかもしれないけど、本気だった。
たった1週間の練習参加で、チームに馴染むために何ができるか考えた結果がそれだった。
サッカーの実力で圧倒できるなら、それだけでいい。
でも俺は大学でほとんど途中出場だった選手だ。
実力だけで勝負するのは現実的じゃなかった。
だったら、まず人として覚えてもらう。
親しみを持ってもらう。そうすれば、プレーも見てもらえる。
スルメイカのように、良さは伝わる

俺には一つ確信があった。
自分の良さは、すぐにはわからないかもしれない。
でも、見続けてもらえれば必ず伝わる。
スルメイカみたいなものだ。
最初はそこまでインパクトがなくても、噛めば噛むほど味が出る。
だからこそ、最初のステップは「知ってもらう」こと。
知ってもらえれば、興味を持ってもらえる。
興味を持ってもらえれば、追いかけてもらえる。
追いかけてもらえれば、俺の良さは自然と伝わる。
この戦略が、見事にハマった。
3チームに練習参加した中の1チームが、俺に興味を持ってくれた。
練習参加だけでなく、残りの公式戦まで見に来てくれるようになった。
途中出場だけど、流れを変えられる選手と評価してもらえるにはちょうどよかった。
そして12月の末、内定が決まった。
驚くほどギリギリだった。
年が明けたらもう新シーズンのスタートが見えてくる時期だ。
他の選手がとっくに進路を決めている中、俺は最後の最後に滑り込んだ。
行動だけでは足りない。戦略がいる

「行動が大事」と俺はいつも言っている。
実際、行動しなければ何も始まらない。
でも、この経験から学んだのは、行動するだけでは足りないということだ。
スカウトがないなら自分で売り込む——これは行動だ。
でもそこに、
「どうやって覚えてもらうか」
「どうやって興味を持たせるか」
という戦略がなければ、ただの練習参加で終わっていた可能性が高い。
行動×戦略
この掛け算が、俺をプロサッカー選手にしてくれた。
サッカーに限った話じゃない。
仕事でも、副業でも、何か新しいことを始める時でも同じだと思う。
動く。でも、ただ闇雲に動くんじゃない。
どうすれば自分の価値を伝えられるか、考えながら動く。
はったりの力

もう一つ、あの経験で大事だったことがある。
はったりだ。
「俺ならできる」——4年の時の俺は、途中出場ばかりでスカウトも来ていなかった。
客観的に見れば、プロになれる状況じゃなかった。
でも俺は、自分にはったりをかました。
「俺はプロになれる人間だ」と、自分自身に言い聞かせた。
これは嘘をつくこととは違う。
自分の可能性を、自分だけは信じるということだ。
周りが無理だと思っていても関係ない。
データや実績が足りなくても関係ない。
自分が自分を信じなくなったら、そこで終わりだ。
はったりでもいいから、まず自分を信じる。
そうすれば行動できる。
行動すればチャンスが生まれる。
チャンスが来たら戦略で掴む。
この流れが、俺の人生を変えた。
俺のサッカー人生は「成功」だったか

結果として、俺のサッカー人生は成功だったかと聞かれたら、正直そうとは言い切れない。
華々しいタイトルを獲ったわけじゃない。
誰もが知るスター選手になったわけでもない。
でも、一つだけ胸を張れることがある。
プロサッカー選手の平均引退年齢は26歳と言われている。
その中で、俺は大卒からプロになって約10年間、サッカー選手として生き続けた。
これは俺にとって、大きな成功体験だ。
大学4年で途中出場ばかりだった選手が、スカウトもなしに自力でプロの世界に飛び込んで、10年間戦い続けた。
途中で契約満了を告げられたこともあった。
怪我で動けなくなったこともあった。
監督に干された時期もあった。
それでも辞めなかった。
あの12月の末、ギリギリで滑り込んだ日から始まった10年間。
あの時動かなかったら、この10年はなかった。
最後に

大学4年の時、俺の周りには
「もう遅い」「現実を見ろ」という空気があったと思う。
でも俺は動いた。
根拠のない自信と、はったりと、戦略を持って動いた。
結果、プロサッカー選手になれた。
そして10年間、その世界で戦い続けることができた。
もし今、何かに挑戦したいけど自信がない人がいるなら、伝えたい。
根拠なんてなくていい。はったりでもいい。
でも動くなら、戦略を持て。
ただがむしゃらに走るだけじゃなく、どうすれば自分を知ってもらえるか、覚えてもらえるか、価値を伝えられるか。
そこまで考えて動いた人間だけが、最後に滑り込める。
俺がそうだったように。
一つの参考にしてもらえたら嬉しい。
Just do it


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