ポゼッションサッカーを志向するチームは、勝てない。
近年のJ2を見渡せば、それが「定説」のように語られている。
今治19位、札幌18位。ボールを持つことにこだわりがあるチームが、軒並み沈んでいる。
でも、カターレ富山はJ2で現在:3位にいる。
しかも攻撃CBP(チャンスビルディングポイント)はリーグ1位。
チャンス構築率もリーグ1位。
ポゼッション志向のチームが、J2で最も多くのチャンスを作り出している。
これは偶然じゃない。
僕は元プロサッカー選手として約10年間、ピッチの上で「ボールを持つ意味」と「持たされる怖さ」の両方を体に刻んできた。
だからこそ断言できる。富山のサッカーは、ただの「ポゼッション」ではない。
カメレオンのようなプレーの色を変える柔軟さがある。
この記事を読むとわかること
- カターレ富山がポゼッション志向でありながらJ2上位にいる「構造的な理由」
- 苦しむクラブとの決定的な差をデータで比較
- 安達亮監督の戦術設計と、
若きU-21代表・亀田歩夢の離脱を乗り越える力
この記事を読まずに富山の試合を見ても、「なんかうまいチームだな」で終わってしまう。
データの裏側と元プロの肌感覚を知れば、次の試合が10倍面白くなる。
【結論】富山が強い3つの理由

| 理由 | データ的根拠 | ひと言で言うと |
|---|---|---|
| ①ラストパスをビビらない | ラストパス数・チャンス構築率ともにリーグ1位 | 持つだけじゃなく「刺せる」 |
| ②カウンターもできる二刀流 | ショートカウンター指数52 ロングカウンター指数59 | 状況に応じて戦い方を変える |
| ③守備が崩壊しない | KAGI(守備指数)リーグ5位、被チャンス構築率5位 | 攻めても後ろが安定 |
ポゼッションで沈むチームとの違いは明確だ。
富山は「ボールを持つ」ことが目的ではなく、
「ゴールに直結するプレーを出し続ける」ことが目的になっている。
全試合データ:数字が語る富山の正体

| 節 | 対戦 | 結果 | 保持率 | AGI | KAGI | 構築率 | シュート | 成功率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 八戸 | ●0-2 | 65.8% | 56 | 57 | 7.1% | 10 | 0.0% |
| 2 | 秋田 | ○4-0 | 65.7% | 69 | 52 | 28.2% | 37 | 10.8% |
| 3 | 今治 | ○4-0 | 48.5% | 54 | 59 | 16.7% | 17 | 17.6% |
| 4 | 藤枝 | ●2-3 | 54.9% | 75 | 61 | 25.0% | 29 | 6.9% |
| 5 | 磐田 | ○1-0 | 47.1% | 58 | 52 | 8.5% | 12 | 8.3% |
| 6 | 栃木C | △0-0 | 51.6% | 66 | 42 | 22.5% | 27 | 0.0% |
| 7 | 山形 | ○2-0 | 54.0% | 50 | 65 | 18.2% | 20 | 10.0% |
| 8 | 横浜FC | △3-3 | 51.2% | 60 | 50 | 21.5% | 23 | 13.0% |
決してボール保持率が安定して高い訳ではない。
サッカーは相手がいて初めて成り立つスポーツだ。
だからこそ対戦相手によって、
闘い方を柔軟に変えていることがデータから透けて見える。
保持率が50%を切った試合(今治戦48.5%、磐田戦47.1%)でも、富山は勝っている。
ボールを持てる試合では持って崩し、持てない試合ではカウンターで仕留める。
これが「二刀流」の正体だ。
AGI・KAGIランキングで見る「攻守のバランス」

映像を見る中で、今のカターレには安定感があるなと率直に感じていた。
データでもそれが顕著に現れている。
攻守両方でトップクラスの数字を出している。
| チーム | AGI | KAGI | 成績 | ゴール/試合 | 被ゴール/試合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 富山 | 60.8(1位) | 54.8(5位) | 3位 | 1.88 | 1.00 |
| 仙台 | 49.7(9位) | 60.6(1位) | 1位 | 1.88 | 0.88 |
| 大宮 | 56.4(4位) | 48.9(12位) | 4位 | 2.00 | 0.88 |
| 札幌 | 46.4(15位) | 52.1(6位) | 18位 | 1.25 | 2.13 |
| 今治 | 43.3(19位) | 43.1(19位) | 19位 | 0.88 | 2.00 |
- 首位の仙台は「守備型」
- 大宮は「攻撃型」
- 富山は「両方」
札幌はKAGI 6位と守備指数は悪くないのに被ゴール2.13。今治はAGI・KAGI両方19位。
同じ「ポゼッション志向」でも、完成度がまるで違う。
これが、今カターレ富山が好調な理由だ。
「持つだけ」じゃなく「刺す」

| チーム | シュート/試合 | 構築率 | ゴール/試合 | 成功率 |
|---|---|---|---|---|
| 富山 | 21.9(1位) | 18.1%(1位) | 1.9(3位) | 8.6%(15位) |
攻撃回数は7位なのに、シュート数とチャンス構築率はリーグ1位。
要するに、富山は攻撃の「回数」ではなく「質」で圧倒している。
心理学で「損失回避バイアス」という概念がある。
人はミスして失うことを、成功して得ることよりも強く恐れる。
ラストパスを出してミスするリスクを恐れて横パスを選ぶ。
結果、チャンスを作れず逆にカウンターを食らう。
富山は、まさにこのラストパスの質が高い。
僕自身、プロ時代にFWとして何度も経験した。
「出せよ!」と叫んでも、味方がラストパスが出ない。
次第に、ゴールに向かう動きが少なくなったことがある。
縦パスが入らないと、FWは次第に動きの質が落ちる。
ただ、縦パスを入れるだけでは、狙われてカウンターを受けるリスクが付き纏う。
ポゼッション型のチームは、今ここで苦しんでいる。
しかし、富山の攻撃CBP・パスCBPともにリーグ1位と質が伴っている。
| 指標 | 富山 | リーグ順位 |
|---|---|---|
| 攻撃CBP | 196.15 | 1位 |
| パスCBP | 154.13 | 1位 |
チーム全体の攻撃力、パスの質。
どちらもリーグ1位。
個人の突破力ではなく、チーム全体の連携でチャンスを作っている。
この質が、安易な失点をも防ぐことに繋がっている。
個人データが示す「全員攻撃」の設計

最も目を見張ったのが、誰が出ても戦術を理解して表現できていることだ。
先ほども伝えたが、妙に安心感がある理由が、この設計にある。
攻撃CBP Top5:中盤が攻撃を牽引
| 選手 | Pos | 攻撃CBP | 試合 | G | A | 90分平均 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| チョンウヨン | MF | 23.96 | 6 | 0 | 1 | 3.99 |
| 髙橋馨希 | MF | 22.49 | 8 | 1 | 1 | 2.86 |
| 布施谷翔 | MF | 20.87 | 8 | 0 | 2 | 2.61 |
| 谷本駿介 | MF | 20.60 | 8 | 0 | 1 | 2.66 |
| 深澤壯太 | DF | 17.34 | 8 | 0 | 1 | 2.23 |
上位5人のうち4人がMF、1人がDF。FWが1人もいない。
つまり、富山は「中盤から攻撃を設計するチーム」だということだ。
ここが肝だ。
J2で苦しむチームは、DF→MFのパスで引っ掛けられてショートカウンターで失点を重ねている。
一方、富山はMF→FWのパスが多い。
仮にパスを引っ掛けてもMFから守備ができる。
この微妙な違いが失点をビビらない構造だ。
ラストパスランキング:「刺す」役割の分散
| 選手 | ラストパス数 | パスCBP |
|---|---|---|
| 髙橋馨希 | 21本 | 12.38 |
| 谷本駿介 | 16本 | 19.62 |
| チョンウヨン | 14本 | 22.82 |
| 吉平翼 | 13本 | — |
| 布施谷翔 | 11本 | 14.79 |
ラストパスが5人に分散している。
1人のパサーに依存するチームは、そこを消されたら終わりだ。
でも富山は5人がラストパスを出せる。しかもMFの選手がそれをしている。
守備CBP:攻撃的な選手が守備もする
| 選手 | 守備CBP | 90分平均 |
|---|---|---|
| 深澤壯太 | 100.79 | 12.98 |
| 谷本駿介 | 93.12 | 12.01 |
| 布施谷翔 | 83.49 | 10.44 |
| チョンウヨン | 77.13 | 12.86 |
| 髙橋馨希 | 67.61 | 8.59 |
もう一つ、紹介したいデータが攻撃的な選手の献身性だ。
攻守分業ではなく、全員が攻撃も守備もする。
これが富山の「二刀流」のもう一つの意味だ。
チームスタイル指標:中央攻撃とカウンターの使い分け
| 攻撃スタイル | 指数 | シュート率 |
|---|---|---|
| 中央攻撃 | 74 | 45.9% |
| 敵陣ポゼッション | 72 | 38.2% |
| 右サイド攻撃 | 61 | 21.6% |
| ロングカウンター | 59 | 34.0% |
| 左サイド攻撃 | 55 | 26.4% |
| ショートカウンター | 52 | 27.6% |
中央攻撃の指数74、シュート率45.9%が突出。
サイドに展開して時間を作りながら、最終的には中央を割ってゴールに迫る。
さらにロングカウンター指数59、シュート率34.0%。
ポゼッション志向のチームがカウンターでもこれだけの数値を出せるのは珍しい。
パス交換データが示す「三角形の連携」
| パス交換 | 回数 |
|---|---|
| 髙橋→深澤 | 95回 |
| 深澤→髙橋 | 91回 |
| チョンウヨン→谷本 | 89回 |
| 岡本→深澤 | 87回 |
| 谷本→チョンウヨン | 74回 |
髙橋⇔深澤のラインが計186回
チョンウヨン⇔谷本のラインが計163回。
特に注目してほしいパスラインが、チョンウヨン⇔谷本だ。
MF同士のパスが163本。このパス交換の間にFWは、ボールへの動き出しができる。
スルーパスが多いのもこの2つの強固なパスラインがチームの背骨になっている。
安達亮監督の設計図:マリノス仕込みの戦術眼
| 時期 | 所属 | 役職 |
|---|---|---|
| 1999年 | 横浜F・マリノス | コーチ |
| 2000-2003年 | 横浜F・マリノス | ユース監督 |
| 2011-2014年 | ヴィッセル神戸 | HC→監督 |
| 2018-2020年 | カターレ富山 | 監督(1期目) |
| 2022-2025.5 | 横浜F・マリノス | AC兼育成部長 |
| 2025.5-現在 | カターレ富山 | 監督(2期目) |
横浜F・マリノスで20年以上のキャリアある。
日本のポゼッションサッカーの代表格であるマリノスの育成部門トップを務めた人物が、富山で指揮を執っている。
ポゼッションの基礎を叩き込む育成手腕と、J2の現実を知る現場経験。
この二つが融合しているから、「持つだけ」のサッカーに陥らない。
みていて非常に参考になるチームを作り上げている。
まさにJ2を席巻している監督の一人だ。
「ポゼッションサッカーだから弱い」のではない。
「ポゼッションしかできない」から弱い。
富山はポゼッションもカウンターもできる。
保持率50%を切っても勝てる。この柔軟性こそが決定的な差だと考察している。
まとめ:カターレ富山が証明した「ポゼッションの正解」
| 項目 | 富山の特徴 | データ |
|---|---|---|
| 攻撃力 | チャンス構築率リーグ1位 | 18.1% |
| 守備力 | KAGI リーグ5位 | 54.8 |
| 柔軟性 | ポゼッション+カウンター二刀流 | 保持率50%以下でも勝利 |
| 組織力 | ラストパスが5人に分散 | 髙橋21本を筆頭に5人が11本以上 |
| 課題 | シュート決定率 | 8.6%(15位) |
ポゼッションサッカーは死んでいない。
「持つだけ」になれば沈む。守備が崩壊すれば勝てない。
でも富山のように「持って刺す」「持てない時はカウンター」という二刀流ができれば、J2上位で戦える。
ラストパスをビビらず出し続ける。
中盤全員が攻守に走り回る。
カターレ富山は、「ポゼッションの正解」を体現している。
最後のパスだけは、ビビるな。
富山のサッカーを指導の現場に参考にしたい。
MFが何度も「刺せる」チームは、みていて面白い。
それをカターレ富山は体現している。
あなたの参考になれば嬉しい。
Just do it


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