【26-27シーズン】カターレ富山はなぜ強い?データで紐解く二刀流の正体

Jリーグ分析

ポゼッションサッカーを志向するチームは、勝てない。

近年のJ2を見渡せば、それが「定説」のように語られている。

今治19位、札幌18位。ボールを持つことにこだわりがあるチームが、軒並み沈んでいる。

でも、カターレ富山はJ2で現在:3位にいる。

しかも攻撃CBP(チャンスビルディングポイント)はリーグ1位。

チャンス構築率もリーグ1位。
ポゼッション志向のチームが、J2で最も多くのチャンスを作り出している。

これは偶然じゃない。

僕は元プロサッカー選手として約10年間、ピッチの上で「ボールを持つ意味」と「持たされる怖さ」の両方を体に刻んできた。

だからこそ断言できる。富山のサッカーは、ただの「ポゼッション」ではない。

カメレオンのようなプレーの色を変える柔軟さがある。


この記事を読むとわかること

  • カターレ富山がポゼッション志向でありながらJ2上位にいる「構造的な理由」
  • 苦しむクラブとの決定的な差をデータで比較
  • 安達亮監督の戦術設計と、
    若きU-21代表・亀田歩夢の離脱を乗り越える力

この記事を読まずに富山の試合を見ても、「なんかうまいチームだな」で終わってしまう。

データの裏側と元プロの肌感覚を知れば、次の試合が10倍面白くなる。


【結論】富山が強い3つの理由

理由データ的根拠ひと言で言うと
①ラストパスをビビらないラストパス数・チャンス構築率ともにリーグ1位持つだけじゃなく「刺せる」
②カウンターもできる二刀流ショートカウンター指数52
ロングカウンター指数59
状況に応じて戦い方を変える
③守備が崩壊しないKAGI(守備指数)リーグ5位、被チャンス構築率5位攻めても後ろが安定

ポゼッションで沈むチームとの違いは明確だ。

富山は「ボールを持つ」ことが目的ではなく、
「ゴールに直結するプレーを出し続ける」ことが目的になっている。


全試合データ:数字が語る富山の正体

節対戦結果保持率AGIKAGI構築率シュート成功率
1八戸●0-265.8%56577.1%100.0%
2秋田○4-065.7%695228.2%3710.8%
3今治○4-048.5%545916.7%1717.6%
4藤枝●2-354.9%756125.0%296.9%
5磐田○1-047.1%58528.5%128.3%
6栃木C△0-051.6%664222.5%270.0%
7山形○2-054.0%506518.2%2010.0%
8横浜FC△3-351.2%605021.5%2313.0%
出典:Football LAB

決してボール保持率が安定して高い訳ではない。

サッカーは相手がいて初めて成り立つスポーツだ。

だからこそ対戦相手によって、
闘い方を柔軟に変えていることがデータから透けて見える。

保持率が50%を切った試合(今治戦48.5%、磐田戦47.1%)でも、富山は勝っている。

ボールを持てる試合では持って崩し、持てない試合ではカウンターで仕留める。

これが「二刀流」の正体だ。

AGI・KAGIランキングで見る「攻守のバランス」

映像を見る中で、今のカターレには安定感があるなと率直に感じていた。

データでもそれが顕著に現れている。

  • 富山はAGI(攻撃の際にどれだけ相手ゴールに近づけたか)リーグ1位(60.8)
  • KAGI(守備の際に相手を自陣ゴールに近づけなかったか)リーグ5位(54.8)。

攻守両方でトップクラスの数字を出している。

チームAGIKAGI成績ゴール/試合被ゴール/試合
富山60.8(1位)54.8(5位)3位1.881.00
仙台49.7(9位)60.6(1位)1位1.880.88
大宮56.4(4位)48.9(12位)4位2.000.88
札幌46.4(15位)52.1(6位)18位1.252.13
今治43.3(19位)43.1(19位)19位0.882.00
出典:Football LAB
  • 首位の仙台は「守備型」
  • 大宮は「攻撃型」
  • 富山は「両方」

札幌はKAGI 6位と守備指数は悪くないのに被ゴール2.13。今治はAGI・KAGI両方19位。

同じ「ポゼッション志向」でも、完成度がまるで違う。

これが、今カターレ富山が好調な理由だ。


「持つだけ」じゃなく「刺す」

チームシュート/試合構築率ゴール/試合成功率
富山21.9(1位)18.1%(1位)1.9(3位)8.6%(15位)
出典:Football LAB

攻撃回数は7位なのに、シュート数とチャンス構築率はリーグ1位。

要するに、富山は攻撃の「回数」ではなく「質」で圧倒している。

心理学で「損失回避バイアス」という概念がある。

人はミスして失うことを、成功して得ることよりも強く恐れる。

ラストパスを出してミスするリスクを恐れて横パスを選ぶ。
結果、チャンスを作れず逆にカウンターを食らう。

富山は、まさにこのラストパスの質が高い。

僕自身、プロ時代にFWとして何度も経験した。

「出せよ!」と叫んでも、味方がラストパスが出ない。

次第に、ゴールに向かう動きが少なくなったことがある。

縦パスが入らないと、FWは次第に動きの質が落ちる。

ただ、縦パスを入れるだけでは、狙われてカウンターを受けるリスクが付き纏う。

ポゼッション型のチームは、今ここで苦しんでいる。

しかし、富山の攻撃CBP・パスCBPともにリーグ1位と質が伴っている。

指標富山リーグ順位
攻撃CBP196.151位
パスCBP154.131位
出典:Football LAB

チーム全体の攻撃力、パスの質。

どちらもリーグ1位。

個人の突破力ではなく、チーム全体の連携でチャンスを作っている。

この質が、安易な失点をも防ぐことに繋がっている。


個人データが示す「全員攻撃」の設計

最も目を見張ったのが、誰が出ても戦術を理解して表現できていることだ。

先ほども伝えたが、妙に安心感がある理由が、この設計にある。

攻撃CBP Top5:中盤が攻撃を牽引

選手Pos攻撃CBP試合GA90分平均
チョンウヨンMF23.966013.99
髙橋馨希MF22.498112.86
布施谷翔MF20.878022.61
谷本駿介MF20.608012.66
深澤壯太DF17.348012.23
出典:Football LAB

上位5人のうち4人がMF、1人がDF。FWが1人もいない。

つまり、富山は「中盤から攻撃を設計するチーム」だということだ。

ここが肝だ。

J2で苦しむチームは、DF→MFのパスで引っ掛けられてショートカウンターで失点を重ねている。

一方、富山はMF→FWのパスが多い。

仮にパスを引っ掛けてもMFから守備ができる。

この微妙な違いが失点をビビらない構造だ。

ラストパスランキング:「刺す」役割の分散

選手ラストパス数パスCBP
髙橋馨希21本12.38
谷本駿介16本19.62
チョンウヨン14本22.82
吉平翼13本—
布施谷翔11本14.79
出典:Football LAB

ラストパスが5人に分散している。

1人のパサーに依存するチームは、そこを消されたら終わりだ。

でも富山は5人がラストパスを出せる。しかもMFの選手がそれをしている。

守備CBP:攻撃的な選手が守備もする

選手守備CBP90分平均
深澤壯太100.7912.98
谷本駿介93.1212.01
布施谷翔83.4910.44
チョンウヨン77.1312.86
髙橋馨希67.618.59
出典:Football LAB

もう一つ、紹介したいデータが攻撃的な選手の献身性だ。

攻守分業ではなく、全員が攻撃も守備もする。

これが富山の「二刀流」のもう一つの意味だ。


チームスタイル指標:中央攻撃とカウンターの使い分け

攻撃スタイル指数シュート率
中央攻撃7445.9%
敵陣ポゼッション7238.2%
右サイド攻撃6121.6%
ロングカウンター5934.0%
左サイド攻撃5526.4%
ショートカウンター5227.6%
出典:Football LAB

中央攻撃の指数74、シュート率45.9%が突出。

サイドに展開して時間を作りながら、最終的には中央を割ってゴールに迫る。

さらにロングカウンター指数59、シュート率34.0%。

ポゼッション志向のチームがカウンターでもこれだけの数値を出せるのは珍しい。


パス交換データが示す「三角形の連携」

パス交換回数
髙橋→深澤95回
深澤→髙橋91回
チョンウヨン→谷本89回
岡本→深澤87回
谷本→チョンウヨン74回
出典:Football LAB

髙橋⇔深澤のラインが計186回

チョンウヨン⇔谷本のラインが計163回。

特に注目してほしいパスラインが、チョンウヨン⇔谷本だ。

MF同士のパスが163本。このパス交換の間にFWは、ボールへの動き出しができる。

スルーパスが多いのもこの2つの強固なパスラインがチームの背骨になっている。


安達亮監督の設計図:マリノス仕込みの戦術眼

時期所属役職
1999年横浜F・マリノスコーチ
2000-2003年横浜F・マリノスユース監督
2011-2014年ヴィッセル神戸HC→監督
2018-2020年カターレ富山監督(1期目)
2022-2025.5横浜F・マリノスAC兼育成部長
2025.5-現在カターレ富山監督(2期目)
出典:各種報道

横浜F・マリノスで20年以上のキャリアある。

日本のポゼッションサッカーの代表格であるマリノスの育成部門トップを務めた人物が、富山で指揮を執っている。

ポゼッションの基礎を叩き込む育成手腕と、J2の現実を知る現場経験。

この二つが融合しているから、「持つだけ」のサッカーに陥らない。

みていて非常に参考になるチームを作り上げている。

まさにJ2を席巻している監督の一人だ。


「ポゼッションサッカーだから弱い」のではない。

「ポゼッションしかできない」から弱い。

富山はポゼッションもカウンターもできる。
保持率50%を切っても勝てる。この柔軟性こそが決定的な差だと考察している。


まとめ:カターレ富山が証明した「ポゼッションの正解」

項目富山の特徴データ
攻撃力チャンス構築率リーグ1位18.1%
守備力KAGI リーグ5位54.8
柔軟性ポゼッション+カウンター二刀流保持率50%以下でも勝利
組織力ラストパスが5人に分散髙橋21本を筆頭に5人が11本以上
課題シュート決定率8.6%(15位)

ポゼッションサッカーは死んでいない。

「持つだけ」になれば沈む。守備が崩壊すれば勝てない。

でも富山のように「持って刺す」「持てない時はカウンター」という二刀流ができれば、J2上位で戦える。

ラストパスをビビらず出し続ける。
中盤全員が攻守に走り回る。

カターレ富山は、「ポゼッションの正解」を体現している。

最後のパスだけは、ビビるな。

富山のサッカーを指導の現場に参考にしたい。

MFが何度も「刺せる」チームは、みていて面白い。

それをカターレ富山は体現している。

あなたの参考になれば嬉しい。

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