ジュビロ磐田のサッカーは、めちゃくちゃいい。
これは皮肉でも慰めでもない。率直にそう思う。
秋葉忠宏新監督のもと、J1復帰への強い意志を感じるサッカーをしている。
強度は高い。全員がハードワークする。ボールを持つ時の技術も、持たない時の守備ブロックも、メリハリがあって見ていて気持ちいい。
でも現実は、J2で13位。8試合で3勝1分4敗。勝ち点10。
ジュビロ磐田のような名門が、J2のこの位置にいること自体がおかしい。
でも、なぜこの位置にいるのか。データだけではわからない。
8試合で131本のシュートを打って、10得点。成功率わずか7.6%。
これが、すべてではない。サッカーは相手がいて初めて成り立つ。
この記事では、元プロサッカー選手の僕が、ジュビロ磐田の「強いのに勝てない」という矛盾を、データと戦術、そして元プロの経験から紐解いていく。
この記事を読むとわかること
- なぜジュビロ磐田の「いいサッカー」が勝利に結びつかないのか
- データが証明する「決定力の呪い」の正体
- 元プロが対戦して感じた磐田の「怖さ」と「隙」
- 千葉戦4-2に見えた突破口と、残り30試合の展望
読まないと、磐田の順位だけ見て「弱い」と誤解したままになる。
実態は全然違う。データと元プロの肌感覚知れば、応援の仕方が変わる。
磐田 全8試合データ——「攻めている」のに勝てない
まず、磐田の今シーズン全8試合の成績を見てほしい。
| 節 | 相手 | スコア | H/A | 保持率 | シュート | 構築率 | 成功率 | AGI | 奪取P |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 秋田 | 1-1 △ | H | 54.6% | 17 | 13.0% | 5.9% | 58 | 80.30 |
| 2 | 横浜FC | 1-3 ● | A | 55.8% | 12 | 10.8% | 8.3% | 60 | 73.06 |
| 3 | 徳島 | 2-1 ○ | H | 52.6% | 16 | 15.4% | 12.5% | 61 | 70.48 |
| 4 | 栃木C | 3-1 ○ | A | 41.5% | 15 | 11.4% | 20.0% | 64 | 107.42 |
| 5 | 富山 | 0-1 ● | H | 52.9% | 17 | 11.3% | 0.0% | 48 | 127.86 |
| 6 | 甲府 | 1-0 ○ | A | 59.2% | 14 | 11.9% | 7.1% | 59 | 78.45 |
| 7 | 新潟 | 1-2 ● | A | 62.0% | 15 | 11.0% | 6.7% | 62 | 86.55 |
| 8 | 八戸 | 1-2 ● | H | 67.5% | 25 | 18.9% | 4.0% | 53 | 71.76 |
驚愕のデータが浮かび上がる。
8試合平均シュート16.4本。これはJ2でもトップクラスだ。
チャンス構築率も平均12.96%と悪くない。
AGI(攻撃指数)も平均58.1と、リーグ上位の攻撃力を示している。
しかし——。
シュート成功率は8試合で平均8.1%。特に深刻なのが2つの試合だ。
25本のシュートを浴びせて1得点。これはもう「不運」のレベルを超えている。
しかし、その数字には磐田特有の苦しみがある。
それは、どのチームも引いて守ってくる。ゴール前に人を集めて必死に守る。
攻撃の「量」は圧倒的なのに、「質」が結果に繋がらないのは外的要因が大きい。
元プロが対戦して感じた2タイプのチーム——磐田は「怖いほう」

僕がプロ時代にいわゆるビッグクラブと対戦した時、2つの感覚があった。
タイプA:「あれ、こいつら意外といけるぞ」型
名前はある。歴史もある。
でも試合が始まると、プレスが来ない。
ボールを差し込んでこない。
「持たせてカウンターで仕留めたら全然いけるんじゃないか」と、緊張感が抜ける。
今のコンサドーレ札幌(J2最下位)がまさにこのタイプだ。
タイプB:「やっぱこいつら強いぞ」型
隙を見せたらどんどんプレッシャーが来る。
クロスもガンガン入れてくる。
ゴールに迫る意思がビンビン伝わってくる。
怖い。「やべえ、気を抜くとやられる」と感じる相手だ。
ジュビロ磐田は、間違いなく後者だ。
データがそれを裏付けている。
攻撃の迫力も守備の強度も、数字に表れている。
磐田の「落とし穴」——相手の能力を試合中に上げてしまう

ここからが、元プロとしての本音だ。
磐田は確かに強い。
でも、磐田と対戦すると「相手のレベルが上がる」という現象が起きる。
どういうことか。
試合の立ち上がり、磐田の強度に相手は面食らう。
プレスが速い、寄せが強い、クロスがバンバン入ってくる。「やべえ」と慌てる。
でも、試合が進んでいくにつれて——。
相手は磐田の強度に慣れてくる。
「こう来るならこうかわせばいい」
「ここにスペースがある」という感覚が、時間と共に見えてくる。
そうなると、試合が「楽しく」なる。
こういう思考が対戦相手に芽生える。
僕自身、強い相手と試合している時にこの感覚を何度も味わった。
最初は脅威に感じる。でも慣れてくると、火がつく。
強い相手だからこそ、自分の力を120%出そうとする。
心理学でいう「フロー状態」に近い。適度な難易度が人間の能力を最大化する。磐田の強度が「ちょうどいい刺激」になってしまっているのだ。
これが、磐田の最大の落とし穴だ。
拮抗する展開のなかで——「運」がまだ転がってこない

磐田の試合は、ほぼ毎回こういう展開になる。
- 磐田が圧倒的にボールを持ち、シュートを打ちまくる
- 相手はリスペクトしてしっかりブロックを組む
- 拮抗した展開になる
- セットプレーやPK、ファールがらみで磐田が失点する
八戸戦を見てほしい。25本のシュートを浴びせながら1-2で敗戦。
前半31分にはPKを獲得したが、太田のキックはGK大西にセーブされた。
PKを決めていれば1-0でリード。
試合展開は全く違ったものになっていた。
相手はJ2昇格したばかりの八戸。
磐田のことをリスペクトし、しっかりブロックを組んで守り、少ないチャンスを確実に仕留めた。
これは八戸が強かったのではなく(もちろん健闘は称えるべきだが)、磐田が自分たちの決定力で自分たちの首を絞めている構図だ。
千葉戦4-2に見えた「理想の形」——クロスの質×回数が生むズレ
ここで、直近の磐田の強さを話したい。
9月29日、ルヴァンカップ2回戦。
ジュビロ磐田はJ1のジェフユナイテッド千葉を相手に4-2で勝利した。
| 時間 | 得点者 | 内容 |
|---|---|---|
| 6分 | 西久保駿介 | 先制点 |
| 23分 | マテウス・ペイショット | クロスからヘディング |
| 42分 | 杉山直宏(千葉) | 1点返す(HT 2-1) |
| 46分 | 石川大地(千葉) | 追いつく(2-2) |
| 66分 | マテウス・ペイショット | 再びクロスからヘッド |
| 85分 | 小池直矢 | ダメ押し |
この試合が素晴らしかったのは、千葉もしっかり守っていた中で得点を重ねたことだ。
千葉は4-2のブロック(CB4枚+ボランチ2枚)でゴール前を固めた。
PKスポット付近までしっかり人を配置していた。
でも磐田は、何度も何度もクロスを上げ続けた。
1回、2回、3回と上げ続ける。
すると、千葉の守備ブロックにズレが生まれる。CB4枚とボランチの連携にほんの小さな隙間ができる。
ボランチが戻り切れなくなる。セカンドボールを磐田が前向きで拾い、そのままゴールに叩き込む。
これが磐田の強さだ。こじ開けるのではなく、ぶっ壊す回数が「理想の崩し」だ。
クロスの質×回数。威圧的な攻撃を浴びせ続け、相手のブロックを「摩耗」させる。
1発で崩すことは難しい。5回、10回と繰り返すことで、必ずどこかに穴が開く。
ペイショットの2発はまさにこの結実だ。
190cmの高さとフィジカルに、質の高いクロスが組み合わさった時の破壊力。
これがリーグ戦で安定して出せれば、磐田は一気に上位進出できる。
「1点取ったら止まらない」——磐田の威圧力が持つポテンシャル
千葉戦で見えた重要なことがもう一つある。
磐田は1点を取ると、一気に試合をコントロールできる。
3-1で勝った栃木C戦もそうだった。
先制点を奪った瞬間、相手は前に出ざるを得なくなる。
すると磐田の強度が牙を剥く。カウンターで追加点、さらに追加点。
逆に言えば、今の磐田の問題は「0-0の時間帯をどう突破するか」に集約される。
拮抗した展開が続くと、相手は磐田の強度に慣れていく。でも1点もぎ取れば、相手はブロックを崩して攻めなければならない。その瞬間、磐田の攻撃は加速する。
だから、今の磐田に最も必要なのは「先制点」を取る仕組みだ。
セットプレーでも、カウンターでも、クロスからでもいい。
最初の1点さえ取れれば、磐田の威圧力は2点目、3点目を引き寄せる。
まとめ
| 項目 | 現状の課題 | 改善の方向性 |
|---|---|---|
| シュート成功率 | 8試合平均8.1%(富山戦0%、八戸戦4%) | ゴール前での質を上げる。ペイショットへのクロス精度向上 |
| 先制点 | 先制した試合は3勝0敗。先制されると0勝1分4敗 | セットプレー・クロスからの先制パターンを確立 |
| 相手の慣れ | 後半に相手がフロー状態に入る | 試合中の可変システム、テンポチェンジ |
| 決定機でのメンタル | PK失敗(八戸戦)、0本台の試合あり | 成功体験の蓄積。千葉戦の再現 |
悲観する必要はない——残り30試合の展望
最後に、僕の率直な意見を言わせてもらう。
磐田を悲観する必要はまったくない。
なぜなら、サッカーの「中身」は脅威だ。
やっているサッカーの質、強度、選手たちのハードワーク、戦術の理解度——これらは一朝一夕で手に入るものじゃない。磐田にはそれがある。
足りないのは「決定力」だ。
あとは、ゴール前の最後の精度。そしてちょっとした運。だけだ。
第1クールが終わりかけている段階で13位。
まだ30試合以上が残っている。J2は38試合のマラソンだ。
秋葉監督のチーム作りが浸透すればするほど、千葉戦のような「理想の崩し」がリーグ戦でも出てくる。
ペイショット、イアゴテレス、乾貴士。決めるべき選手は揃っている。
怖いサッカーをしているチームは、必ずどこかで帳尻が合う。
それがサッカーという競技の美しさだ。
磐田サポーターの皆さんには、この状況を悲観するのではなく、「楽しみながら見守る」ことをオススメしたい。
秋葉監督が、磐田をJ1に導く瞬間は、必ず来る。
あなたの参考になれば嬉しい。
Just do it


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