自信を失ったチームに何が起きるのか?今治vs新潟で見えた”自信喪失の正体”

Jリーグ分析

今治の問題は、戦術云々ではない。

自信だ。

16試合のデータがそれを証明している。


約10年間プロの世界で戦ってきた。

今回は2026-27シーズン J2第16節・アルビレックス新潟 vs FC今治(1-0)を考察する。

この記事を読むとわかること

  • 今治の16試合データから浮かび上がる「自信喪失」の構造
  • 菊地健太のクリアミスが象徴する、自信を失った選手のピッチ上の現実
  • 連敗の中でサポーターにできること、してはいけないこと

読まないとどうなるか:

「今治は弱いから負けた」で終わってしまう。

でも本当の問題はそこではない。

自信を失ったチームに何が起きるのか
——その構造を知らなければ、同じ光景を何度も見ることになる。


FC今治 2026-27シーズン全成績

通算:3勝3分10敗(19位) 

得点16 失点31 得失点差-15


このデータから見える「自信喪失」

今治が勝った3試合を見てほしい。

試合スコア保持率シュート成功率
第6節 鳥栖1-049.3%812.5%
第9節 栃木C2-149.0%1118.2%
第10節 徳島2-138.8%1020.0%
  • 3試合すべて、ボール保持率が50%以下。

逆に、保持率50%以上の8試合は0勝2分6敗。

指標勝利3試合の平均直近5試合の平均(12-16節:0勝1分4敗)
シュート成功率16.9%3.0%
ボール保持率45.7%52.6%
シュート数9.7本13.2本

ボールを持って、シュートも打てている。でも入らない。

成功率が16.9%から3.0%に落ちている。

これは技術の問題ではない。

5倍以上も下がる技術の劣化は、3週間では起きない。

  • 落ちたのは技術ではなく、自信だ。

3つの疑問

第16節・新潟戦を見て、多くのサポーターがこう感じたはずだ。

  • 疑問①:なぜ菊地のクリアがあんな場所に飛んだのか?
  • 疑問②:なぜ今治はボールを持っても何もできないのか?
  • 疑問③:サポーターとして、何ができるのか?

順番に、データと体験から言語化していく。


55分の失点が物語るもの——菊地健太のクリアミス

後半10分、桑山侃士のゴールで新潟が先制した。

このゴールの起点になったのが、菊地健太のクリアミスだ。

本来、あの場面で取るべき選択肢は2つ。

コーナーキックに逃げるか、遠くにクリアして危険ゾーンから遠ざけるか。

どちらでもよかった。

でも菊地のヘディングは、ペナルティエリア内の危険なゾーンにこぼれた。

なぜセカンドボールの準備ができなかったのか。

答えはシンプルだ。誰もあの位置にクリアするとは思わなかったからだ。

味方がクリアした後のポジション取りは、「デフォルト」をベースに予測して動く。

そのデフォルトとは、ゴールからできるだけ遠くサイドに弾く。

そして、クリアボールに対して最も最短でボールにプレスできるポジションをとる。

それが、まさかペナルティエリアの真ん中にこぼれてくるとは、予測のしようがない。

これが、セカンドボールに反応できなかったロジックになる。

ここが自信を失った選手のプレーの特徴だ。

自信があるとき、クリアは思い切りが良い。

迷いがないからボールに強く当たれる。

自信を失うと、一瞬の判断が鈍る。
「CKに逃げよう」と思いながらも体が中途半端に反応し、力のないヘディングになる。

結果、一番危険な場所にこぼれる。


「自信喪失でピッチに立つ」とはどういうことか

ここは僕自身の経験から書かせてほしい。

プロ生活の中で、監督から干された時期がある。

  • 使われない時間が続くと、自分のプレーが信じられなくなる。
  • 試合に出ても、普段なら迷わない判断で迷う。
  • いつもなら通せるパスが怖くなる。

大事な商談の直前に、準備した資料がパソコンから全部消えた状態を想像してほしい。

話す内容は頭にある。
伝える力もある。

  • でも手元に何もない。
  • 壇上に立った瞬間、足が震える。

自信を失ったピッチに立つというのは、あの感覚と似ている。

引き出しがない状態で試合に向かう。

体は動くけど、頭が追いつかない。
考えすぎて遅くなる。

遅くなるから失敗する。失敗するからまた自信を失う。

この悪循環が、今の今治に起きている。

その引き出しは、監督・コーチ・フロントでいかに増やせるか。

  • 選手の自信を取り戻す作業は、失う倍以上の時間がかかる。

シュート成功率——消えた「自己効力感」

心理学に「自己効力感」という概念がある。

「自分にはできる」という確信のことだ。

この自己効力感が高い選手は、シュートを打つとき「入る」と思っている。

だからコースを狙える。GKの動きを見る余裕がある。

自己効力感が崩壊すると、「外したらどうしよう」が先に来る。

体が縮こまる。シュートが枠に飛ばない。

データがこれをはっきり示している。

期間成績シュート数得点成功率
連勝時(9-10節)2勝21本4点19.1%
直近5試合(12-16節)0勝1分4敗66本2点3.0%

66本打って2点。

これが「打てないのではない、入る気がしない」という状態だ。

  • 第16節の新潟戦では、シュートわずか8本。
  • 今シーズン最少だ。枠内はたったの2本。得点はゼロ。

首位・新潟のシュート17本に対して、今治は半分以下。

指標新潟今治
シュート178
枠内シュート42
ボール支配率57%43%
1対1勝利2010
ドリブル136
クリア2437

(データ出典:Jリーグ公式)

今治のクリア数37回に注目してほしい。

新潟の24回と比べて13回も多い。

クリアが多いということは、つなぐ余裕がないということだ。

来たボールをとにかく跳ね返す。判断する余裕がないから、蹴っ飛ばすしかない。

1対1勝利は新潟の半分。ドリブルも半分以下。

すべての数字が「消極的なサッカー」を物語っている。


「余白」の消失——面白いプレーを見せたい欲がなくなった

自信があるチームには「余白」がある。

余白というのは、面白いプレーを見せたい、こういうこともできるんだぞという欲のことだ。

サッカーに限らない。仕事でも趣味でも、自信があるときは「もっとこうしたら面白いんじゃないか」という発想が出てくる。

  • 余裕があるからこそ、創造性が生まれる。

今治からは、この余白が完全に消えている。

久保山体制の立ち上がりを振り返ると、9節・栃木C戦と10節・徳島戦で連勝した。

このとき、保持率は49%と38.8%。
ボールを持つことにこだわらず、カウンターで仕留めた。

  • シュート成功率は18.2%と20.0%
  • 少ないチャンスを確実にモノにした

あのとき、選手にはまだ「俺たちはやれる」という感覚があったはずだ。

それが11節・八戸戦の3-3から崩れ始める。

節結果得点失点成功率
11△ 3-33316.7%
12● 1-31310.0%
13● 0-1010.0%
14△ 1-1114.8%
15● 0-4040.0%
16● 0-1010.0%

直近6試合で0勝2分4敗。得点5、失点13。

シュート成功率は試合を追うごとに下がっている。

16.7%→10.0%→0%→4.8%→0%→0%。

この数字の下降カーブは、まさに自信が溶けていく過程そのものだ。

心理学には「学習性無力感」という概念がある。

「何をやっても結果が変わらない」と学習してしまう状態のことだ。

連敗が続くと、選手の脳は「頑張っても負ける」と記憶する。

すると、次の試合でも「どうせまた」という感覚がプレーに出る。

今治の13節以降のシュート成功率は、学習性無力感に近い状態が起こっている。

  • 打っても打っても入らない。
  • だから打つことすら怖くなる。

16節の新潟戦でシュートが今季最少の8本になったのは、心理的な側面も大きい。


監督交代が残した”見えない傷”

モウレロ体制と久保山体制の成績を比較する。

指標モウレロ期(1-6節)久保山期(7-16節)
試合数610
成績1勝1分4敗2勝2分6敗
得点511
失点1318
得失点差-8-7

数字だけ見ると、久保山体制は悪くない。

むしろ1試合あたりの得点は増えている。

でも問題は流れだ。

久保山体制に変わった当初、選手たちには覇気があった。
新しい監督のもとで「変わるんだ」という気持ちがあった。

9節・10節で連勝。ここまではうまくいっていた。

しかし11節の八戸戦で3-3。

  • そこから12節の仙台戦で1-3の敗戦。
  • 13節の秋田戦は61.6%もボールを持ちながら0-1。

ボールを持てている。チャンスも作れている。でも勝てない。

そして15節の札幌戦。ホームで0-4の大敗。

この5試合の流れで、選手たちの中にあった「変われる」という希望は完全に砕かれたように映った。

16節の新潟戦は、その延長線上にある。

首位チーム相手にシュート8本、枠内2本。もう「打ちにいく」気力すら薄れていた。

攻撃の形を作るだけの駒はいる。

でも、その駒を動かすエンジン

  • ——つまり自信——が切れかけている。

そして、その自信は、引き出しの多さだ。

そして、「やってやるぞ」という余白だと僕は思っている。


サポーターの力は、想像以上に大きい

ここからは、少し違う角度で話をさせてほしい。

サポーターへの話だ。

僕自身、プロ時代に経験したことがある。

チームが負け続けると、スタンドからの声が変わる。

応援が減るのは仕方ない。
批判の声が上がるのも、当然だ。

お金を払ってスタジアムに来てくれているんだから、忖度のない言葉を言う権利はある。

むしろ、忖度のない言葉こそ選手に届く。

問題は、その言葉に愛情があるかどうかだ。

「もっとやれよ」と「お前らなんかダメだ」は、似ているようで全然違う。

  • 前者には「信じているからこそ」がある。
  • 後者には「見捨てた」がある。

選手はSNSを見る。
すべてじゃなくても、いやでも目に入る。

批判は自由だ。でも愛情を込めてほしい。

「ダメだ」で終わるのではなく「こうしてほしい」で終わる。

それだけで、選手への伝わり方はまったく変わる。


まとめ:自信は引き出しの多さと成功体験

自信喪失でピッチに立つ怖さを、僕は知っている。

引き出しがない状態で試合に向かう感覚。

  • 体は動くのに、頭がついてこない。
  • 何をやっても裏目に出る気がして、足が止まる。

でも、あの地獄から抜け出す道も少なからず体験した。

  • ピッチでできる引き出しを増やす
  • ブレずにやり続ける
  • 結果が出るまでやる
  • 自信に変わる

正直それ以上のことを、今治フロントはやっているはずだ。

だから、ブレずにやってほしい。

今治には、戦える選手がいる。

Eジュニオの爆発力、梶浦のミドル、森のドリブル、ピピの技術、駒井の経験——武器はなくなっていない。

失くしたのは武器じゃない。武器を振るう自信だ。

サポーターの力も大きい。
批判するなとは言わない。

でも、愛情を込めてほしい。

あなたの参考になればうれしい。

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