カマタマーレ讃岐はなぜ下位に沈むのか?データが暴くクロス地獄の構造

Jリーグ分析

讃岐は守備が甘い。

サポーター・ファンならそう思っている人が多いだろう。

でも、データはもっと残酷な事実を突きつけている。

守備チャンスビルディングポイント、リーグ1位。
J3で最も守備に労力をかけているチームが、被シュート19位・被ゴール18位。

守っていないわけではない。守り方が、構造ごと壊れている。

僕は元Jリーガーとして10年間プロの世界で戦ってきた。その経験から断言する。讃岐の問題は「選手の頑張り」ではなく「守備設計の欠陥」にある。

この記事を読むとわかること

  • 讃岐の失点の35%がクロスから生まれている構造的な理由
  • 4-2ブロック(DF4枚+ボランチ2枚)が機能しない原因
  • 得点の50%がセットプレー依存という攻撃の偏り
  • 今の戦力でも勝てる現実的な改善策

この構造を知らずに試合を見続けると、「また負けた」「選手が悪い」で終わる。

でもそれは選手だけの問題ではない。構造に欠陥がある。


全試合成績データ(2026/27 J3リーグ)

まず、今シーズンの全試合データを見てほしい。

節相手スコアシュートチャンス構築率保持率得点者
1福島2-1 ○88.1%46.9%佐野, 林田
2北九州0-0 △77.0%35.4%—
3高知1-2 ●1110.2%43.4%禹相皓
4鹿児島3-4 ●1412.7%41.0%後藤, 佐野×2
5滋賀0-3 ●1614.5%55.0%—
6琉球0-1 ●1210.1%41.7%—
7愛媛1-2 ●86.9%45.6%牧山
8岐阜3-4 ●1612.2%41.8%米澤, 佐野, 村上
9栃木SC0-0 △149.1%50.6%—
10相模原2-3 ●107.8%45.1%波本, 田尾
11熊本0-3 ●————

11試合で1勝2分8敗。勝点5。20チーム中19位。

(データ出典:Football LAB / Jリーグ公式)

第4節の鹿児島戦と第8節の岐阜戦。
3点取って4点取られている。

シュートは14本、16本と打てている。攻めてないわけではない。

攻撃が足りないのではなく、明らかに失点が止まらないことに問題がある。


3つの疑問を代弁する

  • 「なぜこんなに簡単にクロスからやられるのか?」
  • 「ボランチが戻ってこないのは気のせいか?」
  • 「得点が後藤とセットプレーに頼りすぎじゃないか?」

ここからは、この3つの疑問にデータと戦術で答えていく。


【体験談】4-2ブロックが壊れる瞬間

データを見る前に、ひとつ僕の経験を話したい。

プロ時代、4-4-2のブロック守備を仕込まれた時期がある。

監督から「DF4枚とボランチ2枚の距離感を一定に保て」と言われた。

鎖で繋がれたように動け、と。

理屈はわかる。でも試合で走り続けると、ボランチは確実に遅れてくる。

遅れた瞬間、DFラインとボランチの間にスペースが生まれる。

そこに入られると、DFはボランチに委ねるしかない。
背走しながらのクロス対応ほどキツいものはない。

あの感覚を、今の讃岐のデータに見る。


課題①:クロスからの失点35%——サイドの深い位置を侵入される構造

【現象】讃岐はクロスから7失点。全失点の35%

讃岐の失点パターンを見てほしい。

失点パターン失点数割合
クロスから735.0%
セットプレーから315.0%
30m未満のパスから315.0%
こぼれ球から315.0%
PK210.0%
スルーパスから210.0%

クロスからの失点が突出している。

20失点のうち7失点
——3試合に1回以上、クロスから点を取られている計算だ。

なぜクロスを簡単に上げられるのか

問題はクロスを上げる「位置」にある。

讃岐はペナルティエリア外にDFラインを設定して「追い出す守備」を意識しているが、GKとCBの距離が少し空いている。

ここを使われて失点を重ねている。

心理学でいう「正常性バイアス」が、ここで起きている。

「このラインでも大丈夫」「まだ抜かれていない」
——その認知が、サイドの深い位置まで相手を通してしまう。

危機を危機と認識できない瞬間に、人は揃っているのに背後を取られている。

被シュート15.6本はリーグワースト2位

データを見ると、讃岐の被シュートは1試合平均15.6本でリーグ19位。

インターセプトは0.7回で19位。
つまり、前で奪えず、深くまで侵入され、シュートを浴びまくっている。

クロスからの失点は「サイドの守備が甘い」という単純な話ではない。

ボランチが下がりきれず、サイドバックが孤立し、深い位置まで侵入される

——その構造的な問題が「クロス地獄」を生んでいる。

次に試合を見るときの観察ポイント:相手がボールを持った瞬間、ボランチ2枚の位置を見てほしい

DFラインと同じ高さまで戻れているか?それとも遅れて走っているか?


課題②:4-2ブロックの崩壊——ボランチの戻りが遅い

守備CBPリーグ1位なのに、被ゴール18位という矛盾

ここに讃岐の守備の核心がある。

指標讃岐の数値リーグ順位リーグ平均
守備CBP169.051位—
クリア35.1回1位27.1回
被シュート15.6本19位—
被ゴール2.0点18位—
インターセプト0.7回19位1.2回

守備CBPとクリアがリーグ1位。
守備の「量」は断トツで多い。

それなのに被シュートと被ゴールがワースト圏。

この矛盾の正体は明確だ。

前で奪えず、後ろで跳ね返しているだけだ。

DFラインとボランチが連動できていない

讃岐の4-2ブロック(DF4枚+ボランチ2枚)の問題は、この6枚が「鎖で繋がれたように」同じ距離感で動けていないことにある。

ボランチ2枚の戻りが遅れると、DFラインとの間にスペースが生まれる。

相手はそのスペースでフリーになり、余裕を持ってシュートやスルーパスを選択できる。

これは「計画錯誤」そのものだ。
やりたい守備(追い出す守備、ペナ外にライン設定)に必要なリソース

——つまりボランチの運動量とポジショニング精度を過小評価している。

  • 禹相皓の奪取ポイント115.09(チーム1位)
  • 宮﨑慎の奪取ポイント101.55(チーム2位)

ボランチ2枚は「個人として」は奪っている。
でもチームとしての守備ブロックは機能していない。

クリア1位=ずっと押されている証拠

クリア35.1回がリーグ1位という数字は、讃岐が「守れている」証拠ではない。

むしろ逆だ。

  • 常に押し込まれ、DFラインまでボールを運ばれ、跳ね返し続けている証拠だ。

クリアで凌いでも、こぼれ球を拾われてまた攻められる。

失点パターンの「こぼれ球から3失点(15%)」がそれを裏付けている。

讃岐に必要なのは「もっとクリアすること」ではない。

「クリアしなくて済む守備設計」だとおもっている。


課題③:得点の50%がセットプレー依存——攻撃の偏りと後藤への集中

流れの中からゴールが生まれない

讃岐の得点パターンを見てほしい。

得点パターン得点数割合
セットプレーから541.7%
30m未満のパスから325.0%
セットプレー直接18.3%
クロスから18.3%
スルーパスから18.3%
ドリブルから18.3%

セットプレー関連(直接+間接)で6得点。全得点12の50%だ。

ペナルティエリア進入回数は1試合平均7.5回でリーグ最下位。

  • ドリブルも7.1回でリーグ最下位
  • 30mライン進入回数は24.8でリーグ19位

流れの中でペナルティエリアに入れない。だからセットプレーに頼るしかない。

【構造】後藤・佐野への依存構造

後藤優介のデータを見ると、この構造がはっきりする。

選手出場ゴールアシストゴール期待値シュートCBP
佐野竜眞104—1.16810.69
後藤優介10131.4448.41
村上悠緋81—1.0367.10
上野輝人80—0.6094.10
  • 後藤はアシスト3でチームトップ。
    セットプレーのキッカーとしてチャンスを演出している。
  • 佐野竜眞はゴール期待値1.168に対して4ゴール
    と、個人能力で期待値を大きく上回っている。

つまり、讃岐の攻撃は「後藤のキック精度でセットプレーからチャンスを作り、佐野が個人能力で決める」という構造に偏っている。

これは「損失回避バイアス」が効いている。

流れの中で縦パスを入れてミスするリスクを恐れ、安全策としてセットプレーに頼る。

結果として、攻撃パターンが読まれやすくなる。

  • 攻撃CBPリーグ最下位(101.04・20位)
  • パスCBPリーグ最下位(80.69・20位)

この数字が「流れの中で崩す力」の欠如を物語っている。

チーム内競争が起きているのか

選手起用を見ると、フォーメーションが3-1-4-2と3-4-2-1を行き来している。

フォーメーション試合数成績
3-1-4-24試合1勝1分2敗
3-4-2-14試合0勝0分4敗

3-4-2-1では全敗。
3-1-4-2では唯一の勝利を含む成績。

フォーメーションの試行錯誤が裏目に出ている。

  • 宮﨑慎(10試合全先発)
  • 禹相皓(10試合全先発)
  • 後藤優介(10試合中9先発)
  • 佐野竜眞(10試合全先発)

中盤から前線の軸は固定されている一方、GKは今村から青木に交代し、DF陣は3バックと4バックの併用で安定しない。

土台を固めるべき時期に、守備の形が定まっていない。

チーム内競争というよりも「正解を探してさまよっている」状態に近い。


【体験談】セットプレーに頼るしかないチームの空気感

僕がプロ時代に所属したチームでも、流れから点が取れない時期があった。

そうなるとコーナーキックやフリーキックの度に、ベンチ全員が「ここしかない」と思う。あの空気感は異常だ。

セットプレーが決まれば一気に楽になる。

でも決まらないとジワジワと焦りが蓄積する。
相手も「このチームはセットプレーさえ抑えれば怖くない」とわかっている。

讃岐の今の状況は、まさにこれだと思う。

後藤のキック精度は本物だ。

だからこそ、それだけに頼らない攻撃の選択肢が必要になる。


改善策:今の戦力で勝つための4つの視点

批判だけで終わらせない。

今の讃岐が現実的にできる改善策を考察したい。

改善策①:DFラインをペナルティエリア内に設定し、スペースを消す

追い出す守備を意識するなら、ラインをもっと下げていい。

10人全員をペナルティエリア内に引いて、相手の「得点ゾーン」を埋める。

深い位置でクロスを上げさせても、ゴール前に人数がいれば跳ね返せる。

今のクリア能力(リーグ1位)を活かすなら、むしろこの設計のほうが理にかなっている。

改善策②:4-2を「紐で繋がれた距離感」で連動させる

DF4枚とボランチ2枚の距離を一定に保つ訓練を徹底する。

ボランチが攻撃参加した後の戻りを最優先にし、「DFラインの5m前」にボランチが常にいる状態を作る。

これだけでポケットへの侵入後のクロスからの失点が激減する。

改善策③:セットプレーの得点力をさらに強化する

後藤のキック精度は讃岐の最大の武器だ。これを否定する必要はない。

むしろ「セットプレーで先制→守り切る」をチームの勝ちパターンとして確立する。

第1節の福島戦(2-1○)がまさにこの形だ。
保持率46.9%、シュート8本——数字は低くても結果は勝利。

讃岐が今シーズン最も良かった試合を見ると答えが見える。

コーナーキック5.5回(リーグ6位)を活かし、1点を取って全員で守る。

泥臭いが、これが今の讃岐の勝ち筋になっている。

改善策④:3-1-4-2に固定して土台を作る

3-4-2-1は全敗。

3-1-4-2は1勝1分2敗。数字が答えを出している。

フォーメーションを試合ごとに変える余裕は、今の讃岐にはない。

3-1-4-2に固定し、選手の配置と連動を叩き込む。

大嶽直人監督の手腕が問われる局面だ。


まとめ:讃岐の課題と改善策

課題データ根拠改善策
クロスからの失点35%被シュート19位、ポケット侵入DFラインを下げてスペースを消す
4-2ブロックの崩壊守備CBP1位なのに被ゴール18位ボランチの戻りを最優先、紐の距離感
攻撃のセットプレー依存50%攻撃CBP20位、PA進入20位後藤のキック活用+先制→守り切り
フォーメーション迷走3-4-2-1で全敗3-1-4-2に固定して土台を作る

讃岐の選手は走っている。データがそれを証明している。

守備CBPリーグ1位
——走って、戻って、クリアして、跳ね返して。

でも、走る方向が間違っていたら、走るほど疲弊するだけだ。

10人全員で自陣を埋めて、セットプレーで1点取って、全員で90分守り切る。

それがJ3で生き残るサッカーだと思う。

あくまで個人的な見解だ。

あなたの参考になればうれいしい。

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