【J2第8節】宮崎戦で全課題が露呈した札幌——FWプレス不在・ボランチ狙い撃ち・データで検証

サッカー上達

J2第8節、テゲバジャーロ宮崎 3-2 北海道コンサドーレ札幌。

この試合は、今のコンサドーレ札幌の「良くないところ」が全部出た試合だった。

FWがセンターバックとGKにプレスをかけない。

だから宮崎の後ろは楽にボールを持てる。

ビルドアップに選択肢がない。
ボランチにボールが入った瞬間をプレスバックで狙われる。

結果、保持率56.8%を記録しながらシュートわずか8本。昇格組の宮崎に3失点。

ボールを持っているのに、何もできなかった。

僕は元プロサッカー選手として10年間戦った。FWとして「ボールを持っているのに攻めている気がしない」あの感覚は、体で知っている。

今の札幌を見ていると、かつての苦しみと重なる瞬間がある。

この記事を読むとわかること

  • 宮崎戦で何が起きていたのか——戦術とデータで完全解剖
  • 宮崎がどういう狙いで札幌を攻略したのか——プレス構造の正体
  • 今の札幌の良くないところが全部出た理由と、そこからの改善策

「気持ちの問題」「メンタルが弱い」で片づけても何も変わらない。

モヤモヤしているなら、戦術を具体的に紐解くしかない。


宮崎が「楽にボールを持てた」理由——札幌FWのプレス不在

この試合で最も根本的な問題は、札幌のFW大森とMF荒野が、宮崎のCB2枚+GK茂木にまったくプレスをかけなかったことだ。

これはチームの決まり事(戦術)」の可能性も大いにある。

しかし、前からプレスがこれがなければ、相手のビルドアップの始発は完全にフリーになる。

宮崎のGK茂木は終始フリーでロングボールを蹴ることができた。
相手CB黒木にも、ボールを持った時に誰もプレッシャーをかけに行かない。

これが何を意味するか。

宮崎の後ろの選手たちは、時間と余裕を持ってパスの出しどころを選べた。

宮崎のCB黒木がボールを持った時、彼には常に3つ以上の選択肢があった。

  • 右SB松本へのサイドチェンジ
  • ボランチ家坂への縦パス
  • トップ下奥村へのくさびのパス

プレスがないから慌てる必要がない。どこにボールを出すか、じっくり選べる。

一方、札幌のCB西野やCB髙尾がボールを持った時はどうか。

宮崎のFW橋本やMF阿野が即座にプレスをかけてくる。
GK田川にもプレスが来る。時間がない。

余裕がない。結果、苦し紛れのロングパスか、バックパスの連鎖。が起こっていた。

「自分たちはプレスしないが、相手にはプレスされる」

——この非対称構造が、90分を通じて札幌を苦しめ続けた原因だ。


宮崎の「ボランチ狙い撃ち」——プレスバックで効率よく奪う戦術

宮崎の守備は単純なハイプレスではなかった。
もっと効率的で、狡猾な設計がされていた。

前線からの守備のセオリーは、
ボランチのコースを背中で切りながらプレスに行くのが一般的だ。

しかし宮崎は前線からプレスをかけながら、札幌のボランチにボールが入る瞬間をあえて狙っていた。

具体的にはこうだ。

  • 札幌のCBからアンカー大﨑にパスが出る。
        ⬇️
  • 瞬間、宮崎のトップ下・奥村晃司やボランチ・家坂がプレスバック
    (前線からの戻りプレス)で大﨑を挟み込む。
        ⬇️
  • 前からはFW橋本が追い、後ろから中盤が戻って挟む。

ボランチというポジションは、前を向いてこそ機能する。

でもプレスバックで挟まれた大﨑は前を向けない。
横に逃げるか、後ろに戻すしかない。

宮崎はこの「ボランチ狙い撃ち」を、省エネで繰り返した。

90分間ずっとハイプレスをかけるのは体力的に不可能だ。

だから宮崎は、ボランチにボールが入った瞬間だけスイッチを入れる。
それ以外はスペース管理で守る。

オン・オフの切り替えが明確だった。

一方、札幌にはこの罠を回避する術がなかった。


「FWに当てていたら宮崎は疲弊していた」——使わなかったカウンターの武器

ここが今のコンサドーレには最も選択肢がないポイントだ。

宮崎は前からプレスをかけていた。

ということは、背後にスペースが生まれていた。

もし札幌のCBやGK田川が、プレスの裏のスペースにロングボールを送り、FWがそこで収めることができていたら。

あるいはボランチへのパスを「1個飛ばし」で、直接FWに当てることができていたら。

宮崎のプレス隊は戻らなければならない。

前に出て、戻って、また前に出る。
これを繰り返せば、当然宮崎の前線は疲弊する。

プレスの強度は時間とともに落ちる。
前半で宮崎のプレスを走らせることができていれば、後半は札幌がボールを持つ時間が増え、試合の展開は大きく変わっていた可能性がある。

しかし札幌はそれをしなかった。できなかったのかもしれない。そこは俺にはわからない。

FWの大森にロングボールを当てる場面はほとんどなく、後ろでパスを回し続けた。

そして、宮崎のプレスバックに引っかかり続けた。

結果、前半のシュート数はゼロ。保持率56.8%で前半シュートゼロ。

この数字が、すべてを物語っている。


試合展開:宮崎 3-2 札幌を時系列で振り返る

この試合の流れを、時系列で追っていく。

8分:村越凱光の先制点——開始8分で露呈した守備の脆さ

試合開始からわずか8分。宮崎が素早いトランジションから左サイドを崩し、村越凱光が先制ゴール。

札幌がまだ「自分たちのサッカー」を始めようとしている段階で、宮崎はすでにゴールを奪った。

宮崎のGK茂木がフリーでロングボールを蹴り、FW橋本(191cm/82kg)が競り勝ち、セカンドボールから展開。

札幌のFWがGKにプレスをかけていないから、ビルドアップの第一歩を潰せなかった。

仮に、プレスをかけないのであればセカンドボールを、大崎含めボランチに任せ、DFラインで裏のケアとファーストアプローチに行くべきだった。

全てが中途半端に見えてしまう。

この失点パターンが、この試合の本質を象徴している。

前半途中:システム変更3バック→4バック——効かなかった理由

先制されたことで、札幌は前半途中に3バック→4バックへシステム変更を試みた。

しかし、これが全く機能しなかった。なぜか??

宮崎の守備はマンマークではなくスペースを管理する戦術だからだ。

マンマーク守備なら、システムを変えて数的優位を作れば剥がせる。

だがスペース管理は違う。
人ではなくエリアを守る。札幌が3バックだろうが4バックだろうが、宮崎の守備の原則は変わらない。

スペースを消す。ボールが入ったらスライドする。それだけで終わる。

目線を大きく変えない限り、状況は好転しない。

しかも札幌は、システム変更後に自らリトリート(後退)してしまった。

これは宮崎にとって最高のプレゼントだったと思う。
札幌が引けば引くほど、宮崎のFW橋本が収めるスペースが生まれる。

宮崎はGK茂木のロングボールを起点に、相手陣地のスペースにボールを送り込むサッカーをするチームだ。

札幌のリトリートは、宮崎の「やりたいサッカー」をそのまま後押ししてしまった。

行動経済学でいう「損失回避バイアス」が潜んでいる。
「これ以上失点したくない」という恐怖が、リスクを取る縦パスを避けさせ、安全な横パスに逃げさせる。

しかし皮肉なことに、その「安全策」こそが最大のリスクだった。

40分:奥村晃司の追加点——ボランチプレスバックの結実

前半40分、宮崎が2-0とリードを広げた。得点者はトップ下の奥村晃司。

この得点は、まさにボランチプレスバックの設計通りだった。

  • 札幌のボランチ付近でボールを奪い、1個飛ばしで前線に展開。
        ⬇️
  • 少ないタッチ数でゴール前に到達し、奥村がフィニッシュ。

宮崎にとっては「やりたいサッカー」がそのまま得点に直結した場面。

札幌にとっては、前半のうちに2点差をつけられたことで、後半のプランが大きく狂った。

前半のスタッツを見れば、この試合の構図は明らかだ。

  • 札幌は前半シュートゼロ。保持率は高いのに、ゴールに向かうプレーがない。
  • 宮崎は効率的にチャンスを作り、しっかり決めた。

78分:黒木謙吾の3点目、

78分、宮崎の右CB黒木謙吾がゴール。このゴールは、まさに狙い通りだった。

「ペナルティーエリアニアサイド(近い側)の角」

ここにアウトサイド(ゴールから逃げるボール)で質の良いボールが来ると、得点が決まる可能性が上がる。

これは、プロサッカー選手なら誰もが知ってる常識だ。

でも止められない。だからサッカーは面白い。

そして、黒木がファーに流れて決めたゴールも、決まり事だ。

確率的にニアで当てると、ボールをゴールに飛ぶか・ファーに流れるかの2択だ。

してやったりの得点だったはずだ。

誰がどこを守るか、誰がカバーするか。
交代によって生まれた混乱を、宮崎は見逃さなかった。

チームとしての機能不全が、この3失点目に集約されている。

82分:唐山翔自が1点を返す——遅すぎた反撃

82分、途中出場の唐山翔自がゴール。3-1とする。

しかしこの得点は、宮崎が3点リードで守備の強度を落とした時間帯だった。

3-0から追う展開では、相手は無理をする必要がない。

札幌が攻められたのではなく、宮崎が「攻めさせてあげた」という構図に近い。

もちろん唐山の得点力は評価すべきだ。

しかし、この得点を「反撃の兆し」と捉えるのは危険だ。なぜなら、試合の構造的な問題は何一つ解決されていない。

90+3分:バカヨコの意地——そして好調の兆し

アディショナルタイム、アマドゥ・バカヨコが3-2とするゴールを決めた。

このゴールは敗戦の中の光だ。

バカヨコは途中出場から結果を出した。
最後まで闘う姿勢と、ゴールへの嗅覚。

チームが崩壊している中でもゴールを奪える個の力は、今後の札幌にとって大きな武器になり得る。

バカヨコの好調は本物だ。直近の試合での動きを見ても、フィジカルのキレ、スプリントの質、フィニッシュの精度が上がっている。

元プロの感覚として言わせてもらうと、途中出場で結果を出し続ける選手は、スタメンに定着するとさらに化ける。

試合の入りから自分のリズムでプレーできるからだ。
バカヨコがスタメンに定着した時、札幌の攻撃は確実に変わる。

ただし——。

バカヨコ一人に頼る構造では、この先も同じことが起きる。
個人の得点力で勝つことと、チームとして勝つことは別の話でもある。


第8節 宮崎 vs 札幌:試合スタッツ比較

この試合の詳細データを比較する。

指標宮崎札幌
シュート168
チャンス構築率15.8%7.3%
ボール保持率43.2%56.8%
シュート成功率18.8%25.0%
攻撃指数(AGI)4748
守備指数(KAGI)5253
奪取ポイント85.2650.66
守備ポイント20.3312.66
出典:Football LAB

最も注目すべきは「奪取ポイント」の差だ。

宮崎85.26 対 札幌50.66。

宮崎は札幌の1.7倍のボール奪取をしている。
プレスバック戦術が数字にはっきり表れている。

保持率で上回りながら、シュート数はわずか8本(宮崎の半分)。

構築率も7.3%と低迷。「ボールは持っているが何もできていない」状態がデータで裏付けられている。

一方、宮崎の守備ポイント20.33は札幌の12.66を大きく上回る。

チームとしての守備の連動性が数字に出ている。


札幌が改善すべき3つポイント

批判だけで終わるつもりはない。

元プロとして、具体的な改善策を提示する。

あくまで個人的な意見だ。決めるのは監督だ。だから、一つの指標としてみてほしい。

改善①:FWのプレスを「設計」する

FWが闇雲にプレスに行っても意味がない。

「どこに追い込むか」を設計することが重要だ。

具体的には、FWがCB2枚の片方のパスコースを消しながらプレスをかける。

そうすれば、もう一方のCBに追い込めるのでボランチがそこで奪えるチャンスが生まれる。

仮に前線から行かないのであれば、DFラインをさげボランチとの距離を近くすることで裏のスペースを完全になくす設計が必要だ。

少なくとも「FWがGKにプレスをかけないからロングボールを自由に蹴られる」という状況は、戦術以前の問題だ。

改善②:ロングボールという「武器」を持つ

宮崎のプレスバックを無効化する最もシンプルな方法は、中盤を飛ばすことだ。

GK田川やCBから直接FWにロングボールを入れる。

FWが収めて起点を作る。
これだけで宮崎のプレス隊は走り戻る必要が生じ、後半の強度が落ちる。

「ビルドアップ」に固執することが、逆に札幌の首を絞めている。

ショートパスもロングボールも、状況に応じて使い分ける。その「引き出し」がチームに必要だ。

しかし、それにはボールを収められるFWがいる。

その代役を担える選手が出てくると状況は一転するはずだ。

改善③:「共通言語」の構築

宮崎にあって札幌にないもの。それはチームとしての「共通言語」だ。

宮崎のCB黒木はビルドアップの際に3つ以上のパスコースを持っていた。

それは味方が「どこに立てばいいか」をチーム全体で共有しているからだ。

札幌のCBにはその選択肢がなかった。
アンカー大﨑以外に出すところがない。横か後ろに逃げるしかない。

「CBがボールを持ったときに誰がどこに立つか」

「どこを狙っておくべきなのか」
——このシンプルな約束事が、チームの「共通言語」だ。


次節・いわきFC戦の考察——「宮崎以上のプレスが来る」

次節の相手はいわきFC。

結論から言う。宮崎以上に厳しい試合になる。

いわきFCは「もっと前から襲いかかってくる」チームだ。宮崎のようにスイッチのオン・オフを切り替えるのではなく、90分間前からプレスをかけ続ける。

宮崎戦でFWのプレスがなく楽をしていた札幌のCBとGKは、いわき戦では最初からプレッシャーにさらされる。ビルドアップの第一段階から自由がない。

もし宮崎戦と同じサッカーをしたら、前半で試合が終わる可能性がある。

改善のポイントは明確だ。

  • FWが前からプレスに行き、相手のビルドアップを制限する
  • ロングボールで相手のプレスの裏を突く
  • 前線の起点を作る
  • 守備の約束事を共有しておく

宮崎戦で露呈した課題を1週間で修正できるか。


まとめ:宮崎戦で見えた札幌の「全課題」

課題具体的な問題改善策
前線の守備CB2枚+GKにプレスなし→相手が自由にビルドアッププレスの設計(追い込む方向を決める)
ボランチ狙い撃ちプレスバックで挟まれて前を向けないロングボールで中盤を飛ばす選択肢を持つ
共通言語の欠如CBのパスコースがない、交代で守備崩壊ビルドアップの約束事を全員で共有

宮崎戦は、今の札幌の問題がすべて出た試合だった。

でも、裏を返せば「すべて見えた」ということでもある。

問題が見えた時こそチャンスだ。

見えない問題は直しようがないが、見えた問題は直せる。

1週間でどんな修正をするのか、一つの参考にしてほしい。

あなたの参考になれば嬉しい。

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