松本山雅はなぜJ3で勝てないのか?データが暴く「攻撃回数2位なのにゴール19位」の矛盾

Jリーグ分析

26/27シーズンの松本山雅は、J3で2番目に多く攻めている。

  • しかし、2番目に点が取れていない。

攻撃回数131.1回でリーグ2位。
でもゴール数は0.8で20チーム中19位。

この数字を見た瞬間、僕は「あの頃の松本山雅」を思い出した。

J1そしてJ2上位で戦っていた、あのクラブとは別のチームがそこにいる。

元Jリーガーとして10年プロの世界で戦った僕が、データと戦術の両面から松本山雅の現状を考察する。

この記事を読むとわかること

  • 松本山雅が「攻めているのに点が取れない」構造的な理由
  • クロス偏重がなぜ対策されやすいのか、元プロの視点から
  • 守備力J3トップクラスの松本が「化ける」ために必要なこと

逆に、この記事を読まずに松本の試合を見続けると、「なんで勝てないんだ」というモヤモヤが解消されないまま、シーズンが終わってしまう。


松本山雅 2026/27シーズン 全試合データ

まず、12試合の全データを見てほしい。

節対戦相手スコアシュート成功率保持率構築率
1高知0-0120.0%46.7%9.6%
2滋賀2-3238.7%51.5%16.3%
3愛媛2-21315.4%45.2%12.1%
4北九州1-1175.9%49.3%13.0%
5FC大阪0-0120.0%57.7%8.9%
6相模原1-3147.1%54.7%10.9%
7熊本0-0150.0%45.3%12.2%
8栃木SC2-1137.7%46.2%10.7%
9鳥取0-1110.0%52.1%7.6%
10鹿児島1-0616.7%52.4%4.7%
11長野1-2128.3%59.0%7.7%
12群馬2-0––––

(出典:Football LAB / Jリーグ公式)

シュート成功率0%の試合が4試合もある。

第1節・第5節・第7節・第9節。
12本、12本、15本、11本とシュートを打っているのに、得点はゼロ。

さらに注目してほしいのが第10節・鹿児島戦。
シュートわずか6本、チャンス構築率4.7%でシーズン最低。

なのに結果は1-0の勝利だった。
鹿児島の猛攻をゼロで凌いで、PKで勝利を手繰り寄せた。

つまり松本山雅は、たくさん攻める試合は負けて、攻めない時に勝っている。

鹿児島はJ3でもっとも強い。

その相手に勝てた。この試合にヒントがあると思っている。


データが突きつける3つの疑問

  • 「なんで攻めてはいるのに点が入らないの?」
  • 「クロス上げまくってるのに、なんで決まらないの?」
  • 「守備は頑張ってるのに、なんで勝てないの?」

この3つの疑問に、データと元プロの肌感覚で答えていく。


僕が知っている「松本山雅」という存在

松本山雅がJ3で12位。
正直、この順位表を見た時に信じられなかった。

僕が現役の頃、松本山雅はJ1にいたクラブだ。

J2では優勝争いが当たり前。
2014年J2で2位、2016年3位、2018年にはJ2を制してJ1に昇格した。

  • あのアルウィンの雰囲気
  • サポーターの声量
  • 選手たちのハードワーク

「松本と当たる」と聞くだけで、覚悟を決めなきゃいけない相手だった記憶がある。

それが今やJ3で下位争いをしている。

だからこそ、感情論ではなくデータで松本山雅の現状を整理したいと純粋に思った。


攻撃回数2位なのにゴール19位——「努力の錯覚」に陥っている

松本山雅の攻守データを並べると、異常なギャップが浮かび上がる。

指標数値リーグ順位リーグ平均
攻撃回数131.12位118.3
シュート13.510位13.2
クロス19.52位15.5
タックル18.42位15.6
ゴール0.819位1.4
シュート成功率6.1%19位–
枠内シュート3.218位4.3

攻撃回数2位、クロス2位、タックル2位。

「量」の指標はすべてリーグ上位。
なのにゴール19位、シュート成功率19位、枠内シュート18位

  • 「質」の指標はすべてリーグ最低レベル。

これは心理学で「努力の錯覚」と呼ばれる現象に近い。

「たくさん攻めている=良い攻撃をしている」と錯覚してしまう。

走っている、戦っている、クロスを上げている。
でもそれは「攻撃のフリ」をしているだけで、相手のゴールを本当に脅かしているわけではない。

  • 具体的に言うと、30mライン進入回数は31.0でリーグ13位。

攻撃回数が2位なのに、敵陣深くまで侵入できているのは13位という現実。

つまり攻撃の多くが、相手にとって脅威にならないエリアで終わっていることを意味する。

ゴール期待値(xG)のデータがさらに残酷だ。

期待値1.306に対して実際のゴールは0.82。差分-0.486。

これは、本来1試合1.3点決めれるチャンスがあるのに0.8点しか決められていない事になる。


クロス偏重という「一本道の攻撃」

松本山雅のチャンスビルディングポイント(CBP)を見ると、攻撃の偏りが数字に表れている。

CBP項目数値リーグ順位
クロス24.334位
ドリブル11.4016位
パス105.3614位
ゴール24.8619位

クロスCBP4位 vs ドリブルCBP16位。
この差が松本の攻撃パターンを物語っている。

サイドからクロスを上げる。
それが松本の主な攻撃手段だと映像を見てもわかる。

  • コーナーキック6.8本(2位)
  • スローイン27.7本(3位)

という数字も、サイドに偏った攻撃の裏付けになる。

チームスタイル指標を見ると、中央攻撃の指数は47。

リーグ平均以下だ。

バイタルエリア——つまりボランチとセンターバックの間のゾーン——でボールを持つ場面がほとんどない。

これは行動経済学でいう「デフォルト効果」に近い。

人間は慣れた行動パターンから抜け出しにくい。
選手たちが「いつものプレー」に流れてしまう。

ボールを奪ったらサイドに展開、クロスを上げる。その繰り返しだ。

問題は、クロスという攻撃手段は対策が取りやすいということだ。

中央の崩しがなければ、相手は真ん中に人数を固めればいい。

ファーストディフェンダーがクロスを上げる選手の利き足側に立って、質の高いクロスを上げさせない。

ゴール前では人数をかけてヘディングに競り勝てばいい。

  • クロス「しかない」チームへの対策は、プロなら誰でも知っている。

得点パターンのデータを見ると、クロスからの得点は10得点中わずか1点(10%)。

クロスの量はリーグ2位なのに、得点に結びついていない。

  • セットプレーから2点
  • こぼれ球から2点
  • その他2点

得点パターンが分散しているように見えて、実は「設計された得点」がほとんどない。

真ん中もあって、クロスもあって、縦にも速い。

それがベストだ。でも今の松本山雅には、クロスしかない。


セカンドボール奪取後の「イマジネーション不足」

松本の守備は堅い。これはデータが証明している。

守備指標数値リーグ順位
KAGI(守備指数)52.64位
奪取CBP931.964位
タックル18.42位
被ゴール1.26位
被シュート成功率9.0%6位

守備指数KAGI4位、奪取ポイント4位、タックル2位。

石﨑信弘監督が徹底するハードワーク路線は、確実に守備面で結果を出している。

でも、奪ったボールをゴールに結びつけられていない。

ショートカウンターの指数は51(10位)
ゴール率はわずか1.3%。

ボールを奪う力はあるのに、そこからの攻撃が形になっていない。

打てばいいという思考回路に問題が隠れている。

松本山雅の試合を見続けているサポーターならわかるはずだ。

ミドルシュートが多い。決して悪いことではない。

  • しかし、打つゾーンを頭に入れていない
  • バイタルエリアでボールを受ける選手がいない

だからセカンドボールを奪っても、結局サイドに開いてクロスか、無理な角度からのシュートになる。


かつての松本山雅との決定的な違い

ここで、松本のシーズン推移を振り返りたい。

シーズンカテゴリ順位
2014J22位
2015J116位
2016J23位
2018J21位(優勝)
2019J117位
2021J222位(J3降格)
2024J34位
2025J315位
2026/27J312位(12節時点)

J2を制覇してJ1に上がったクラブが、J3で12位。この転落の速度は異常だ。

かつての松本山雅にもハードワークはあった。

走る、戦う、諦めない。それは今と同じだ。

でも決定的に違うのは、「走る先にデザインがあった」ことだと思っている。

  • どこに走るのか、どのゾーンを取るのか、どうやって得点するのか。
  • ハードワークの中に緻密な設計があった
  • がむしゃらに走るだけのチームではなかった

今の松本は、がむしゃらさだけが残って、設計が消えている。

石﨑監督のハードワーク路線は、かつてJ2を席巻した「松本イズム」を再現しようとしている。

その志は間違っていない。

でも松本山雅というクラブは、もう「がむしゃらだけでいいチーム」ではない。

規模が大きくなったこのクラブには、ハードワークの中に知性が必要だ。


まとめ:松本山雅は「化ける」チームだ

課題現状データ改善の方向性
攻撃の質ゴール19位、成功率19位バイタルエリアの活用
クロス偏重クロスCBP4位 vs ドリブル16位中央の崩しを追加
セカンドボール後SCゴール率1.3%奪取後の判断改善
シュート精度枠内シュート18位打つゾーンの明確化
守備力KAGI4位、奪取4位すでにJ3上位

守備はもうできている。

KAGI4位、奪取ポイント4位、タックル2位。崩れにくいチームだ。

足りないのは、攻撃のデザインになる。

  • クロスしかない攻撃に、中央の崩しが加わったら。
  • セカンドボールを奪った後に、前へ2秒の判断ができるようになったら。
  • シュートを打つゾーンが明確になったら。

松本山雅が持っている「ハードワーク」は、絶対的な武器だ。

走れる、戦える、奪える。
これはJ3では簡単に手に入らない財産だ。

あとはその「ハードワーク」の中に、もう一度知性を入れる。

泥臭くていい。きれいじゃなくていい。

でも「どこに走るか」「どこで打つか」。
その設計だけは、絶対に必要だと今の松本山雅を見て純粋に感じた。

松本山雅には、その可能性がある。

守備がしっかりしているチームは、少しの変化で大化けする。

あなたの参考になれば嬉しい。

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