【考察】FC今治3-3八戸|1-3から追いつく「11人以上の底力」と背骨ラインの確立

Jリーグ分析

前半の立ち上がりは完璧だった。

19分にエジガルジュニオが先制。狙い通りの入りだった。

そこから1-3まで持っていかれた。

でもこの試合の本質は「崩れたこと」ではない。

1-3から追いつけたこと、そして誰が出ても戦えるチームになりつつあること——ここにある。


  • エジガルジュニオのハットトリック。
  • 途中出場のパロチェヴィッチと持井響太が持ち込んだ熱量。

背骨ラインの確立。

  • 久保山監督が仕掛けるチーム内競争の成果。

11人+ベンチの選手層。誰が出てもチームの強度が落ちない。

今治はそのフェーズに入りつつある。

元Jリーガーとして断言する。この3-3は「勝ち点2を落とした試合」ではない。

今治が次のステージに進むための、最高のチャレンジだった。


この記事を読むとわかること

  • 1-3から追いつけた「チーム内競争」
    と「途中出場のエネルギー」の正体
  • 背骨ラインの確立が今治の未来を変える理由
  • 守備設計の具体的な課題と、
    すでに見えている改善の方向性

この分析を知れば、今治がどこに向かっているかが見える。

次の試合の見る目が変わるはずだ。


試合スタッツ|数字は「互角以上」を語っている

(データ出典:Jリーグ公式)

支配率52%、パス成功数で78本上回り、枠内シュート7本。

数字の上では互角以上の内容だ。

しかし、保持率が高いと素早い攻撃ができなかったとも読み取れる。

それだけ、八戸のサッカーは今治との相性が悪かった。

しかし、スタメンを大きく入れ替えた上でということを忘れてはいけない。

チームとしての底力が確実に上がっている。


得点経過|「時間帯」に答えがある

指標FC今治ヴァンラーレ八戸
ボール支配率52%48%
シュート15本15本
枠内シュート7本7本
パス成功数325本247本
時間スコア得点者試合の流れ
19′1-0エジガルジュニオ(今治)← 狙い通りの先制
45+1′1-1音泉翔眞(八戸)← 前半AT。流れが変わる
52′1-2オウイエウイリアム(八戸)← 後半7分。逆転される
59′1-3鵜木郁哉(八戸)← 後半14分。苦しい展開
69′2-3エジガルジュニオ(今治)← 反撃開始
90+4′3-3エジガルジュニオ(今治)← 劇的同点。ハットトリック

注目してほしいのは、1-3になった後の今治の反応だ。

途中出場のパロチェヴィッチ(46分IN)と持井響太(55分IN)が入った後、今治は完全に攻勢に転じている。69分にエジガルが1点返し、90+4分にハットトリック達成で劇的同点。

1-3から折れずに追いつける。
このメンタリティと選手層の厚さこそ、今治の武器になりつつある。

一方で、45+1分から59分のわずか14分間に3失点が集中した事実には、具体的な守備設計上の課題がある。

ここは改善できるポイントとして、後半で詳しく整理する。


「背骨ライン」の確立

この試合で最も大きな収穫は、
チームの縦の軸=背骨ラインが確立されてきたことだ。

  • 櫛引一紀
  • 梶浦勇輝
  • 駒井善成
  • 森晃太
  • エジガルジュニオ

この5人が、チームの骨格として機能し始めている。

特に駒井善成。この男はサッカーをよく分かっている。

  • 嫌なところに縦パスを入れる。
  • 簡単に下げない。
  • 相手が引いた中でもポケットに走る。

相手CBがゴール方向に走らされて、エジガルのマークが外れる。

駒井が走れば、エジガルが空く。

森晃太はチームトップの攻撃ポイント(14.31)を叩き出している。

1点目に関しても、森の質的優位性で左サイドを破壊した。

ただしその後は、八戸にしっかり対策された。

ボールが渡らない状況を作られていた。
これは裏を返せば、相手が森を「脅威」と認識している証拠だ。

今後、どのチームも森へ対策は厳しくなることが想定される。

背骨ラインが太くなり、森以外のルート(駒井、梶浦)からの攻撃が増えれば、今治の攻撃は一段階進化する。


チーム内競争の仕掛け——久保山監督の「安住の地を渡さない」

久保山監督は前節・徳島戦からスタメンを大きく入れ替えた。

勝った試合のメンバーをそのまま使わない。

行動経済学で言う損失回避バイアス。人は「今持っているものを失いたくない」と強く感じる。スタメンの座を確保した選手は、それを失うリスクを避けて安全なプレーを選びがちだ。

「安住の地を渡さない」

これは選手への強烈なメッセージになっている。

しかし、その采配は勇気が無ければできない。

「勝っても外す。パフォーマンスが基準を満たさなければ、誰でも入れ替える」

——このプレッシャーが、全員をアグレッシブに変える。

丸山大和がベンチに控えている。
出番はなかった。でもその存在が、スタメンの選手に「後ろに誰かがいる」という緊張感を与え続けている。

11人+6〜7人の戦力層。

誰が出ても強度が落ちないチームが、今治の最大の武器になりつつある。


途中出場のエネルギー——持井響太とパロチェヴィッチが証明したもの

1-3の絶望から2点を返せた最大の理由は、途中出場の選手が持ち込んだ「温度」だ。

46分、安部裕葵に代わってパロチェヴィッチが投入された。

55分、ウェズレイタンキに代わって持井響太がピッチに入った。

パロチェヴィッチは左足のクロスで殴り続けた。

何度跳ね返されても、また上げる。またぶち込む。
「俺にボールを預けろ。やり切る」——そのメッセージがプレーから伝わってきた。

持井響太は、ポーカーフェイスだが競争心が滲み出ていた。

画面上からいい意味での怒りを感じた。「早く俺を使え」と。

僕は、ファーガソン時代のマンUが好きだ。
持井を画面越しで見たときに、ファーガソンが怒っている時を思い出した。

感情を露わにしているわけではない。でもそれとなく伝わってくる覇気があった。

引用:youtube

与えられた短い時間で、自分の価値を証明する。

その気迫がピッチの温度を上げたのは事実だ。

心理学で言う自己効力感。
「自分はやれる」と信じている選手のプレーは、周りにも伝染する。

「出たら絶対にやってやる」——その気持ちを持った選手がベンチにいるチームは、後半に強い。

これこそ、久保山監督が仕掛けている「チーム内競争」の強さだ。

1-3から追いつけたのは偶然ではない。仕組みが生んだ結果だ。


エジガルジュニオのハットトリック——チャンスの数が違う

19分、69分、90+4分。
今治の3得点はすべてエジガルジュニオが決めた。

ゴール期待値3.466に対して、すでにシーズン4得点を記録していた男が、この1試合でさらに3得点を上乗せした。

90+4分の同点弾。諦めない姿勢。

エジガルの決定力は、今治の最大の個の武器だ。

しかし、エジガル一人が凄いのか?

僕は全く違うと思っている。

  • やりきる攻撃の設計がペナルティエリア内への侵入回数を増やしている。

まさに久保山監督の設計が機能している。

そして背骨ラインが太くなれば、エジガルにボールが届く回数はさらに増える。

チームの成長とエジガルの得点力は、相乗効果で伸びていくはずだ。


体験談|「1-3から追いつく」ことの本当の価値

1-3。正直、スタジアムにいたら心が折れかける数字だ。

僕自身、プロ10年の中で何度かこの状況を経験した。

2点差がつくと、ピッチの空気が変わる。
味方の足が止まる。「もう無理かもしれない」——そう思った瞬間、本当に無理になる。

でもこの試合の今治は、折れなかった。

途中出場の選手が温度を上げ、エジガルが2ゴールで追いつく。

折れないチームには、必ず「折れない理由」がある。

それがチーム内競争であり、背骨ラインであり、「出たらやってやる」と思える選手層だ。

この「折れない力」は、勝ち点3以上の価値がある。


守備設計の具体的な課題を整理する

前向きな要素がたくさんあった試合だからこそ、守備の課題を具体的に整理しておきたい。

ここを改善すれば、今治はもっと勝てるチームになれる。


ポケット管理——「5枚いるから守れる」という思い込み

先制後にブロックを引いた今治だが、
CBとWBの間のポケット(ハーフスペース)を八戸に使われた。

5バックが横一線に並び、八戸の斜めのランニングに対してスライドが間に合わない場面が見られた。

心理学で言う正常性バイアス。
「5枚いるから大丈夫」という思い込みが、対応の遅れにつながる。

引いた状態でも、ボールホルダーに対してプレスをかけるスライドしてスペースを埋める。

この一連の連携を整理する。

正直、2失点ともオフサイドのように映る。
しかし、J2にはVARは存在しない。

その微妙な状況でも、対応できる守備ができれば3失点はなかった。


ボールウォッチャーの連鎖

後ろ5枚がボールを見てしまい、背後の相手FWやMFの動きを見失う場面があった。

行動経済学で言うデフォルト効果だ。

人は無意識に「いつものやり方」を選ぶ。
後ろ5枚に入ったら「自分のゾーンを守る」がデフォルトだ。

でもそのデフォルトには「背後を確認する」が、まだ含まれていない。

首を振って背後を確認する習慣の徹底と、声での連携。

これはトレーニングで改善できる課題だ。


WBの負担集中——交代カードの計画的使用

3-4-2-1のWBは上下動の距離がピッチで最も長い。

60分を過ぎると足が止まり始め、スライドの遅れがポケットの空きにつながる。

60分を目安にWBの交代カードを切る計画的な運用。

選手層が厚くなっている今だからこそ、計画的な交代が可能だ。


まとめ:今治のファンになってしまった

3-3は、今治の「今」と「これから」が詰まった試合だった。

背骨ラインの萌芽。チーム内競争の活性化。

途中出場の選手が見せた「やってやる」のエネルギー。1-3から折れずに追いつく底力。

この試合を、「負け」とは呼ばない。

守備設計の課題は明確だ。

でも答えはすでに徳島戦と栃木C戦で出ている。
先制後も「奪いに行く守備」を続けること。それだけだ。

11人以上が戦える選手層。誰が出てもチームの強度が落ちない。

そして、自然と今治の体現するサッカーから勇気をもらえている。

あなたの参考になればうれいしい。

Just do it

コメント

×
タイトルとURLをコピーしました