【26-27シーズン】ジュビロ磐田はなぜJ2で苦しむのか?——25本打っても勝てない「決定力の呪い」

Jリーグ分析

ジュビロ磐田のサッカーは、めちゃくちゃいい。

これは皮肉でも慰めでもない。率直にそう思う。

秋葉忠宏新監督のもと、J1復帰への強い意志を感じるサッカーをしている。

強度は高い。全員がハードワークする。ボールを持つ時の技術も、持たない時の守備ブロックも、メリハリがあって見ていて気持ちいい。

でも現実は、J2で13位。8試合で3勝1分4敗。勝ち点10。

ジュビロ磐田のような名門が、J2のこの位置にいること自体がおかしい。

でも、なぜこの位置にいるのか。データだけではわからない。

8試合で131本のシュートを打って、10得点。成功率わずか7.6%。

これが、すべてではない。サッカーは相手がいて初めて成り立つ。

この記事では、元プロサッカー選手の僕が、ジュビロ磐田の「強いのに勝てない」という矛盾を、データと戦術、そして元プロの経験から紐解いていく。


この記事を読むとわかること

  • なぜジュビロ磐田の「いいサッカー」が勝利に結びつかないのか
  • データが証明する「決定力の呪い」の正体
  • 元プロが対戦して感じた磐田の「怖さ」と「隙」
  • 千葉戦4-2に見えた突破口と、残り30試合の展望

読まないと、磐田の順位だけ見て「弱い」と誤解したままになる。

実態は全然違う。データと元プロの肌感覚知れば、応援の仕方が変わる。


磐田 全8試合データ——「攻めている」のに勝てない

まず、磐田の今シーズン全8試合の成績を見てほしい。

節相手スコアH/A保持率シュート構築率成功率AGI奪取P
1秋田1-1 △H54.6%1713.0%5.9%5880.30
2横浜FC1-3 ●A55.8%1210.8%8.3%6073.06
3徳島2-1 ○H52.6%1615.4%12.5%6170.48
4栃木C3-1 ○A41.5%1511.4%20.0%64107.42
5富山0-1 ●H52.9%1711.3%0.0%48127.86
6甲府1-0 ○A59.2%1411.9%7.1%5978.45
7新潟1-2 ●A62.0%1511.0%6.7%6286.55
8八戸1-2 ●H67.5%2518.9%4.0%5371.76
※出典:Football LAB

驚愕のデータが浮かび上がる。

8試合平均シュート16.4本。これはJ2でもトップクラスだ。

チャンス構築率も平均12.96%と悪くない。
AGI(攻撃指数)も平均58.1と、リーグ上位の攻撃力を示している。

しかし——。

シュート成功率は8試合で平均8.1%。特に深刻なのが2つの試合だ。

  • 富山戦:17本打って0得点(成功率0.0%)。
  • 八戸戦:25本打って1得点(成功率4.0%)。

25本のシュートを浴びせて1得点。これはもう「不運」のレベルを超えている。

しかし、その数字には磐田特有の苦しみがある。

それは、どのチームも引いて守ってくる。ゴール前に人を集めて必死に守る。

攻撃の「量」は圧倒的なのに、「質」が結果に繋がらないのは外的要因が大きい。


元プロが対戦して感じた2タイプのチーム——磐田は「怖いほう」

僕がプロ時代にいわゆるビッグクラブと対戦した時、2つの感覚があった。

タイプA:「あれ、こいつら意外といけるぞ」型

名前はある。歴史もある。

でも試合が始まると、プレスが来ない。

ボールを差し込んでこない。
「持たせてカウンターで仕留めたら全然いけるんじゃないか」と、緊張感が抜ける。

今のコンサドーレ札幌(J2最下位)がまさにこのタイプだ。

タイプB:「やっぱこいつら強いぞ」型

隙を見せたらどんどんプレッシャーが来る。

クロスもガンガン入れてくる。
ゴールに迫る意思がビンビン伝わってくる。

怖い。「やべえ、気を抜くとやられる」と感じる相手だ。

ジュビロ磐田は、間違いなく後者だ。

データがそれを裏付けている。

  • AGI平均58.1
  • 奪取ポイント平均86.99

攻撃の迫力も守備の強度も、数字に表れている。


磐田の「落とし穴」——相手の能力を試合中に上げてしまう

ここからが、元プロとしての本音だ。

磐田は確かに強い。
でも、磐田と対戦すると「相手のレベルが上がる」という現象が起きる。

どういうことか。

試合の立ち上がり、磐田の強度に相手は面食らう。

プレスが速い、寄せが強い、クロスがバンバン入ってくる。「やべえ」と慌てる。

でも、試合が進んでいくにつれて——。

相手は磐田の強度に慣れてくる。

「こう来るならこうかわせばいい」
「ここにスペースがある」という感覚が、時間と共に見えてくる。

そうなると、試合が「楽しく」なる。

  • 「このジュビロを食ったら、俺はもっとすごい選手になれるぞ」

こういう思考が対戦相手に芽生える。
僕自身、強い相手と試合している時にこの感覚を何度も味わった。

最初は脅威に感じる。でも慣れてくると、火がつく。
強い相手だからこそ、自分の力を120%出そうとする。

心理学でいう「フロー状態」に近い。適度な難易度が人間の能力を最大化する。磐田の強度が「ちょうどいい刺激」になってしまっているのだ。

これが、磐田の最大の落とし穴だ。


拮抗する展開のなかで——「運」がまだ転がってこない

磐田の試合は、ほぼ毎回こういう展開になる。

  • 磐田が圧倒的にボールを持ち、シュートを打ちまくる
  • 相手はリスペクトしてしっかりブロックを組む
  • 拮抗した展開になる
  • セットプレーやPK、ファールがらみで磐田が失点する

八戸戦を見てほしい。25本のシュートを浴びせながら1-2で敗戦。

前半31分にはPKを獲得したが、太田のキックはGK大西にセーブされた。

PKを決めていれば1-0でリード。
試合展開は全く違ったものになっていた。

相手はJ2昇格したばかりの八戸。
磐田のことをリスペクトし、しっかりブロックを組んで守り、少ないチャンスを確実に仕留めた。

これは八戸が強かったのではなく(もちろん健闘は称えるべきだが)、磐田が自分たちの決定力で自分たちの首を絞めている構図だ。


千葉戦4-2に見えた「理想の形」——クロスの質×回数が生むズレ

ここで、直近の磐田の強さを話したい。

9月29日、ルヴァンカップ2回戦。
ジュビロ磐田はJ1のジェフユナイテッド千葉を相手に4-2で勝利した。

時間得点者内容
6分西久保駿介先制点
23分マテウス・ペイショットクロスからヘディング
42分杉山直宏(千葉)1点返す(HT 2-1)
46分石川大地(千葉)追いつく(2-2)
66分マテウス・ペイショット再びクロスからヘッド
85分小池直矢ダメ押し

この試合が素晴らしかったのは、千葉もしっかり守っていた中で得点を重ねたことだ。

千葉は4-2のブロック(CB4枚+ボランチ2枚)でゴール前を固めた。

PKスポット付近までしっかり人を配置していた。

でも磐田は、何度も何度もクロスを上げ続けた。

1回、2回、3回と上げ続ける。
すると、千葉の守備ブロックにズレが生まれる。CB4枚とボランチの連携にほんの小さな隙間ができる。

ボランチが戻り切れなくなる。セカンドボールを磐田が前向きで拾い、そのままゴールに叩き込む。

これが磐田の強さだ。こじ開けるのではなく、ぶっ壊す回数が「理想の崩し」だ。

クロスの質×回数。威圧的な攻撃を浴びせ続け、相手のブロックを「摩耗」させる。

1発で崩すことは難しい。5回、10回と繰り返すことで、必ずどこかに穴が開く。

ペイショットの2発はまさにこの結実だ。
190cmの高さとフィジカルに、質の高いクロスが組み合わさった時の破壊力。

これがリーグ戦で安定して出せれば、磐田は一気に上位進出できる。


「1点取ったら止まらない」——磐田の威圧力が持つポテンシャル

千葉戦で見えた重要なことがもう一つある。

磐田は1点を取ると、一気に試合をコントロールできる。

3-1で勝った栃木C戦もそうだった。
先制点を奪った瞬間、相手は前に出ざるを得なくなる。

すると磐田の強度が牙を剥く。カウンターで追加点、さらに追加点。

逆に言えば、今の磐田の問題は「0-0の時間帯をどう突破するか」に集約される。

拮抗した展開が続くと、相手は磐田の強度に慣れていく。でも1点もぎ取れば、相手はブロックを崩して攻めなければならない。その瞬間、磐田の攻撃は加速する。

だから、今の磐田に最も必要なのは「先制点」を取る仕組みだ。

セットプレーでも、カウンターでも、クロスからでもいい。
最初の1点さえ取れれば、磐田の威圧力は2点目、3点目を引き寄せる。


まとめ

項目現状の課題改善の方向性
シュート成功率8試合平均8.1%(富山戦0%、八戸戦4%)ゴール前での質を上げる。ペイショットへのクロス精度向上
先制点先制した試合は3勝0敗。先制されると0勝1分4敗セットプレー・クロスからの先制パターンを確立
相手の慣れ後半に相手がフロー状態に入る試合中の可変システム、テンポチェンジ
決定機でのメンタルPK失敗(八戸戦)、0本台の試合あり成功体験の蓄積。千葉戦の再現

悲観する必要はない——残り30試合の展望

最後に、僕の率直な意見を言わせてもらう。

磐田を悲観する必要はまったくない。

なぜなら、サッカーの「中身」は脅威だ。
やっているサッカーの質、強度、選手たちのハードワーク、戦術の理解度——これらは一朝一夕で手に入るものじゃない。磐田にはそれがある。

足りないのは「決定力」だ。

  • チームの構造が悪いわけじゃない。
  • 戦術が間違っているわけじゃない。
  • やるべきサッカーはできている。

あとは、ゴール前の最後の精度。そしてちょっとした運。だけだ。

第1クールが終わりかけている段階で13位。
まだ30試合以上が残っている。J2は38試合のマラソンだ。

秋葉監督のチーム作りが浸透すればするほど、千葉戦のような「理想の崩し」がリーグ戦でも出てくる。

ペイショット、イアゴテレス、乾貴士。決めるべき選手は揃っている。

怖いサッカーをしているチームは、必ずどこかで帳尻が合う。

それがサッカーという競技の美しさだ。

磐田サポーターの皆さんには、この状況を悲観するのではなく、「楽しみながら見守る」ことをオススメしたい。

秋葉監督が、磐田をJ1に導く瞬間は、必ず来る。

あなたの参考になれば嬉しい。

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