こんな悩みを抱えている指導者や保護者の方、多いと思います。
僕は元Jリーガーとしてプロで10年プレーし、
引退後は指導者として子どもたちと向き合ってきました。
直近で審判をしているとき、
ミスジャッジに対して
「くそすぎやろ」
と暴言を吐かれました。
辛口で言います。

「今の時代だから厳しくできない」は言い訳です。
これをはっきり言える指導者が、今の時代にこそ必要です。
ただし、武力(体罰)で指導するのは完全にNG。
殴って黙らせるのは「指導」ではなく「支配」です。
この記事を読めば、体罰に頼らずに暴言を吐く子どもを正す方法がわかります。
暴言を吐く中学生への対処法3ステップ

結論:暴言を吐く中学生への対処は、この3つが大事です。
| やること | ポイント |
|---|---|
| 暴言の「裏側」にある心理を理解する | 脳の発達が追いついていないだけ |
| その場で冷静に 「ダメなものはダメ」と伝える | 感情で返さない。事実で返す |
| 暴言の「代わりの表現」を教える | 感情を消すのではなく、出し方を変える |
この3つを押さえれば、体罰なしで子どもを正せます。
暴言を受けたときの対応フレーズ3選

①「今の言葉、サッカーのルールでは何になる?」
→ レッドカード(退場)になることを本人に気づかせる。
感情ではなくルールで返す。
②「悔しい気持ちはわかる。でも、それを伝える言葉は他にあるよな?」
→ 感情を否定せず、表現方法だけを正す。
③「お前が審判だったら、今の言葉を言われてどう思う?」
→ 立場を逆転させて、相手の気持ちを想像させる。
この3つのフレーズを使い分けるだけで、暴言への対応は劇的に変わります。
暴言の「裏側」にある心理を理解する ── 脳が追いついていない

暴言を吐く中学生は、「悪いやつ」ではありません。
辛口で言えば、「悪い子じゃないけど、放っておいていい子でもない」。
ここを理解しないと、対処を間違えます。
思春期の脳には、ある「ミスマッチ」が起きています。
感情を司る大脳辺縁系は、10歳頃から急速に発達します。
一方、衝動を抑える前頭前皮質は、20代後半まで成熟しません。
つまり、「アクセル全開なのに、ブレーキが壊れている車」のような状態です。
悔しい、ムカつく、納得いかない。
こういう感情は爆発的に湧き上がるのに、
それを抑える脳の機能がまだ育っていない。
だから、口から先に出てしまう。
「くそすぎやろ」と言いたくて言っているわけではない。
止められないから出てしまっているんです。
ただし、ここで勘違いしてはいけない。
「脳が未熟だから仕方ない」は理解であって、許容ではありません。
理解はする。
この線引きが、指導者にとって一番大事です。
僕が審判をしているとき、
「くそすぎやろ」と言われたことがあります。
ミスジャッジだったかもしれない。
でも、審判に暴言を吐いた時点で、
サッカーのルールではレッドカード。一発退場です。
それがルールです。
サッカーは感情のスポーツです。
悔しくて当然。怒って当然。
でも、その感情を暴言という形で出したら、自分が退場になる。
チームに迷惑がかかる。
この「因果関係」を、感情が落ち着いてから伝えることが大切です。
ステップ②:その場で冷静に「ダメなものはダメ」と伝える ── 感情で返さない

暴言への対処で最もやってはいけないのは、
「怒鳴り返すこと」と「何も言わないこと」です。
どちらも最悪の結果を生みます。
心理学では心理的リアクタンスという概念があります。
人は「やるな」と強く言われると、逆にやりたくなる心理が働きます。
「暴言を吐くな!」と怒鳴れば怒鳴るほど、子どもは反発する。
これは思春期の子どもに限った話ではなく、人間の本能的な反応です。
僕が実際にやったのは、こういう対応でした。
暴言を吐かれたとき、まず冷静に試合を止めました。
そして、その選手の目を見て、静かにこう言いました。
怒鳴らない。
でも、はっきり言う。
「よくないものは、よくない」。
これだけです。
今の時代、「子どもを叱れない大人」が増えています。
その気持ちはわかります。
でも、辛口で言わせてください。
子どもに嫌われることを恐れて本当のことを言えない大人は、指導者をやる資格がありません。
子どもは「叱ってくれない大人」を信頼しません。
「ダメなことをダメと言ってくれる大人」を信頼するんです。
敵は「厳しい指導」ではありません。
という大人の保身です。
暴言の「代わりの表現」を教える ── 感情の出し方を変える

暴言を叱るだけでは不十分です。
「じゃあどうすればいいのか」を教えなければ、子どもは変われません。
- 悔しいものは悔しい。
- ムカつくものはムカつく。
大事なのは、感情をなくすことではなく、感情の「出し方」を変えることです。
プロの世界でも、審判のジャッジに不満を持つことは日常的にあります。
暴言を吐けば退場になり、
チームに迷惑がかかることを知っているからです。
感情がないわけではない。
出し方をコントロールしているだけです。
僕がプロ時代に学んだのは、「言葉を選ぶ」という技術でした。
審判のジャッジに納得いかないとき、
「くそやろう」ではなく「今のはどういう判断ですか?」と聞く。
この「言い換え」ができるかどうかが、大きな差です。
具体的に教えるべき「言い換え」の例を示します。
| 暴言 | 言い換え |
|---|---|
| 「くそやろう」 | 「今のジャッジ、納得いきません」 |
| 「ふざけんな」 | 「悔しい」 |
| 「うるせえ」 | 「少し考えさせてください」 |
| 「死ね」 | ── これは言い換え不可。 絶対に許してはいけない |
この表を見せるだけでも、子どもの意識は変わります。
「暴言を吐くな」ではなく「こう言い換えろ」。
これが、感情の出し方を教える指導です。
武力(体罰)で指導するのはありか? ── 結論:完全にナシ

ここで、はっきり答えます。

武力(体罰)で指導するのは、完全にナシ。
理由は3つ。
1. 体罰は「指導」ではなく「支配」だから。
殴って黙らせた子どもは、暴言をやめたのではありません。
怖いから言えなくなっただけです。
指導者がいなくなった瞬間、同じことを繰り返します。
2. 体罰が「効いた」と感じるのは錯覚だから。
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授
が指摘した平均への回帰という統計的現象があります。
選手がミスをしたあとに体罰を与えると、次はうまくいくことが多い。
「体罰が効いた」と指導者は思う。
でも実際は、ミスのあとは統計的に元のパフォーマンスに戻るだけ。
体罰があってもなくても、結果は同じだったんです。
つまり、体罰の「効果」は、指導者の思い込みにすぎない。
3. 体罰は暴力の連鎖を生むから。
殴られて育った子どもは、大人になったとき
「殴って教える」指導者になる可能性が高い。
日本サッカー協会(JFA)も暴力根絶を明確に打ち出しています。
暴力・暴言は、サッカーの活動現場で絶対に許されない行為です。
僕自身、選手時代に厳しい指導を受けてきました。
怒鳴られたことも、理不尽な扱いを受けたこともある。
厳しい指導と暴力は、まったく別のものです。
この違いを理解できない人間は、指導者になるべきではない。
辛口ですが、これが僕の結論です。
心理学的根拠とデータ

| 概念 | かんたんな説明 |
|---|---|
| 前頭前皮質の未発達 | 衝動を抑える脳の機能が20代後半まで成熟しない |
| 心理的リアクタンス | 「やるな」と言われると逆にやりたくなる心理 |
| 平均への回帰 | ミスのあとは自然にパフォーマンスが戻る統計的現象 |
データで見る事実
| 項目 | 数字・事実 |
|---|---|
| 前頭前皮質の成熟年齢 | 20代後半(大脳辺縁系は10歳頃から発達) |
| 審判への暴言の処分 | レッドカード(一発退場)── 競技規則 |
| JFAの方針 | 暴力・暴言の根絶を明確に宣言 |
| 体罰防止研究の活発化 | 2013年以降、文献の大半が発刊 |
「うちのチームには関係ない」と思ったひと程危ない

うちのチームにはそんな子いないから関係ない!
そう思った方、ちょっと待ってください。
暴言は、ある日突然始まります。
思春期のホルモン変化は予測できません。
去年まで素直だった子が、
中学に入った途端に別人のようになることは珍しくない。
大事なのは、暴言が起きてから慌てることではなく、
起きたときにどう対応するかを事前に決めておくことです。
「もしうちの子が暴言を吐いたら」と想像してみてください。
そのとき、あなたは何と言いますか?
答えが浮かばないなら、この記事はあなたの参考になります。
まとめ:暴言は許すな

| やること | チェックポイント |
|---|---|
| 暴言の「裏側」にある 心理を理解する | 脳の発達の遅れ。悪い子ではない |
| その場で冷静に 「ダメなものはダメ」と伝える | 感情で返さない。事実で返す |
| 暴言の「代わりの表現」を教える | 禁止ではなく、代替案を示す |
| 武力(体罰) | NG。指導ではなく支配。暴力の連鎖を生む |
|---|---|
| 厳しい指導 | OK。妥協しない姿勢。「ダメなものはダメ」 |
暴言を吐く子どもは、エネルギーがある子どもです。
悔しさを感じられるのは、本気でサッカーに取り組んでいる証拠です。
でも、情熱の「出し方」は、大人が教えなければいけない。
よくないことを「よくない」と言える大人が、今の時代にこそ必要です。
叱ることは、愛情です。
殴ることは、暴力です。
この2つを混同しない指導者が増えることを、心から願っています。
Just do it
