そう期待していたサポーターは多いはずです。
でも現実は厳しい状況だ。
開幕5試合で1勝1分3敗。
J1 18位。(26年9月5日現在時点)6得点11失点。
新スタジアム「PEACE STADIUM」で迎えた夢のJ1は、まだ夢のままです。
- なぜVファーレン長崎はJ1で18位に沈んでいるのか?
- 8年ぶりのJ1で何が通用していないのか?
- 高木琢也監督のサッカーはJ1で機能しているのか?
この記事では、元プロサッカー選手の視点から、データと戦術の両面で辛口に分析します。
ただし先に言っておきます。
長崎には希望がある。
同じ昇格組のジェフ千葉が開幕5連敗で20位に沈んでいるのと比べると、長崎は開幕戦で勝ち点3を取り、第5節ではG大阪と2-2で引き分けています。
苦しいけど、崩壊はしていない。だからこそ、今のうちに課題を直視しておく必要があります。
昇格組には独特の「空気」がある

昇格したばかりのチームには独特の「空気」があります。
気合は十分。でもどこか浮足立っている。
J2で当たり前にできていたプレーが、J1のスピードとプレッシャーの前で崩れていく。
「自分たちのサッカーをやれば大丈夫」
——その言葉が、だんだん空虚に聞こえてくる。
僕自身も上のカテゴリーに挑んだとき、まったく同じ経験をしました。
J2で通用した「俺の武器」が、上のレベルでは普通だった。
あの焦りと不安は、今の長崎の選手たちにも通じるものがあるはずです。
長崎が18位に沈んでいる3つの原因

結論から言います。Vファーレン長崎がJ1 18位に沈んでいる原因は、大きく3つです。
| 原因 | 具体的な問題 | データ |
|---|---|---|
| ①守備の脆さが「実失点」に直結 | 被ゴール期待値1.35なのに実失点2.2。防げる失点を量産 | 被ゴール2.2(18位)、被チャンス構築率13.8%(16位) |
| ②攻撃の手数が圧倒的に足りない | シュート・クロス・ドリブルすべてリーグ下位。崩す手段が少ない | シュート9.4(18位)、クロス9.2(18位)、ドリブル7.0(18位) |
| ③ボール保持率が低すぎて主導権を握れない | 45.1%の保持率では自分たちのペースで試合を運べない | ボール保持率45.1%(16位)、30m進入27.4(17位) |
この3つが重なった結果、「開幕戦の勝利」以降、白星から遠ざかっています。
ただし千葉との決定的な違いは、シュート成功率12.8%(6位)という数字。
チャンスは少ないけど、決め切る力はある。
ここに希望が隠れています。
この記事を読むと得られること
- Vファーレン長崎が18位にいる戦術的な理由がデータで理解できる
- 同じ昇格組の千葉と比べて何が違うのかがわかる
- 今後の残留争いで何を改善すれば生き残れるかが見える
- 元プロの視点で見たJ1で戦うために必要なことを知れる
Football LABデータで見る長崎の現在地

主要スタッツ(2026-27 J1 5試合)
| 指標 | 数値 | リーグ順位 | リーグ平均 |
|---|---|---|---|
| ゴール/試合 | 1.2 | 13位 | 1.5 |
| シュート/試合 | 9.4 | 18位 | 13.1 |
| シュート成功率 | 12.8% | 6位 | — |
| クロス/試合 | 9.2 | 18位 | 14.4 |
| ドリブル/試合 | 7.0 | 18位 | 10.2 |
| 被シュート/試合 | 14.4 | 12位 | — |
| 被ゴール/試合 | 2.2 | 18位 | — |
| 被チャンス構築率 | 13.8% | 16位 | — |
| ボール保持率 | 45.1% | 16位 | 50.0% |
| PA進入回数/試合 | 8.8 | 17位 | 12.5 |
| インターセプト/試合 | 2.2 | 3位 | 1.7 |
ゴール期待値と実数の乖離
| 指標 | 期待値 | 実数 | 差分 |
|---|---|---|---|
| ゴール期待値 | 0.869 | 1.2 | +0.331(期待値以上に決めている) |
| 被ゴール期待値 | 1.350 | 2.2 | +0.850(期待値以上に失点している) |
この2つの数字が長崎の現状を物語っています。
攻撃はチャンスが少ないのに効率よく決めている。
でも守備はそれ以上に、防げるはずの失点をしている。
被ゴール期待値1.35に対して実失点2.2。
差分0.85は「守備のミスで毎試合約1点を余計に失っている」ことを意味します。
原因①:守備の脆さが「実失点」に直結している
長崎の守備は「シュートを打たれる回数」自体は悪くありません。
問題は「打たれたシュートが入りすぎている」ことです。
被シュート14.4本/試合は12位。
リーグ平均並みです。しかし被ゴール2.2は18位。
つまり、シュートを打たれる場面は普通なのに、そこからの失点率が異常に高い。
被ゴール期待値1.35に対して実失点2.2。
「1試合あたり約0.85点、防げるはずの失点」を喫している計算です。
柏戦とG大阪戦が象徴的でした。
柏戦では前半に先制されたものの、後半に2ゴールを決めて一時2-1と逆転。
しかしそこから3失点して2-4の逆転負け。
G大阪戦では後半34分と39分に得点して2-0とリードしながら、後半45分と49分に2失点して2-2のドロー。
リードした試合を守り切れない。
これは守備組織の問題というより「集中力の切れ」が大きい。
J2では1点リードすれば逃げ切れる試合が多かった。でもJ1は違います。
1点のリードなんて一瞬で消える。J2の「逃げ切り感覚」がまだ体に残っているのではないか。
僕もプロ時代、上のカテゴリーで同じ経験をしました。「あと10分守ればいい」——その油断が命取りになる。J1では最後の1秒まで120%の集中が求められます。
ただし、守備CBP(チャンスビルディングポイント)は80.43でリーグ2位。個々の守備力は高い。組織として噛み合えば、一気に改善できる数字でもあります。
原因②:攻撃の手数が圧倒的に足りない

長崎はシュート・クロス・ドリブルの3指標すべてがリーグ18位。
攻撃で相手を崩す手段が足りていません。
数字を並べるとその深刻さがわかります。
- シュート:9.4本/試合(18位、リーグ平均13.1)
- クロス:9.2本/試合(18位、リーグ平均14.4)
- ドリブル:7.0回/試合(18位、リーグ平均10.2)
- PA進入:8.8回/試合(17位、リーグ平均12.5)
相手ゴール前までボールを運べていない。
だからシュートも打てない。
クロスも上げられない。
ドリブルで仕掛ける回数も少ない。
ここで注目すべきは、シュート成功率12.8%(6位)という数字です。
少ないチャンスを効率よく決めている。エースのチアゴ・サンタナはゴール期待値1.702に対して2ゴール。期待値以上に決めています。
シュート成功率が高いということは、「チャンスさえ作れれば点が取れる」チームだということ。
問題はチャンスの絶対数です。
30mライン進入回数27.4(17位、リーグ平均37.6)。
相手陣地に入ること自体が少ない。
ボールを奪っても自陣から出られていない。
原因③:ボール保持率が低すぎて主導権を握れない

ボール保持率45.1%(16位)。長崎は「相手にボールを持たれる展開」が常態化しています。
J2時代の長崎は、ボールを持って攻撃する時間を作れていました。
しかしJ1のプレスの速さと質の前に、ビルドアップで苦しんでいます。
パス数440.4(11位)は悪くない数字ですが、ボール保持率が45.1%ということは、相手の方がより多くパスを回しているということ。
つまり長崎がボールを持てている時間が短い。
ここで長崎の強みが見えます。インターセプト2.2回/試合(3位)。
ボールを持てない代わりに、相手のパスを読んで奪い取る力はある。
山口蛍を中心としたベテラン勢の経験値がここに出ています。
「ボール保持率が低い」をネガティブに捉えるか、「インターセプトからのショートカウンター」というフレームで捉え直すか。
高木監督が後者のフレームでチームを設計できれば、ボール保持率が低くても勝てるサッカーは作れます。
実際、開幕戦の京都戦では、チアゴ・サンタナの2ゴールで2-1の勝利を収めています。
ボールを持たなくても、カウンターとセットプレーで勝てることは証明済みです。
長崎が残留のために今すぐやるべき3つのこと

①「防げる失点」をゼロにする
被ゴール期待値1.35と実失点2.2の差分0.85
——これは「集中力の欠如」と「リスク管理の甘さ」から生まれている失点です。
守備CBPが2位の個人力があるのだから、組織の連携さえ改善すれば、1試合あたり1点近く失点を減らせます。
②チアゴ・サンタナへの「供給ルート」を増やす
シュート成功率6位のフィニッシュ力は本物です。
問題はチャンスの数。
翁長聖(攻撃CBPトップ)や岩崎悠人のサイド攻撃を活性化させて、クロスやラストパスの回数を増やすことが最優先。
③山口蛍のインターセプトを「カウンターの起点」に設計する
インターセプト3位という武器を、ショートカウンターの得点パターンに体系化する。
ボールを持てないなら、「奪ってから3秒以内にシュートまで持ち込む」形を徹底する。
「18位=降格」と決めつけるのは早い

そう思う気持ちはわかります。
でも、数字をもう一度見てください。
シュート成功率6位、守備CBP 2位、インターセプト3位。
この3つがリーグ上位にあるチームが、本当に降格するでしょうか。
心理学に「ピーク・エンドの法則」という考え方があります。
人は経験全体ではなく、「最も印象的な瞬間」と「最後の瞬間」で評価を決める傾向がある。
今のサポーターの印象は、柏戦の逆転負けやFC東京戦の0-3が強烈に残っている。
でも開幕戦でチアゴ・サンタナが2ゴールを決めた瞬間、PEACE STADIUMが揺れた瞬間——あのピークを忘れないでほしい。
新スタジアムで戦える幸せは、当たり前じゃない。
J2で8年間、ずっと夢見てきた舞台に立っている。
苦しくても、ここからが本当の勝負です。
Vファーレン長崎が18位にいる3つの原因まとめ

| 原因 | 問題の核心 | 改善の鍵 |
|---|---|---|
| ①守備の脆さ | 被xG1.35→実失点2.2。防げる失点が多い | 守備CBP2位の個人力を組織で活かす |
| ②攻撃の手数不足 | シュート・クロス・ドリブル全て18位 | サイド攻撃の活性化でチャンス増加 |
| ③ボール保持率の低さ | 45.1%で主導権が握れない | インターセプト3位を活かしたカウンター設計 |
8年ぶりのJ1。新スタジアム。チアゴ・サンタナ、山口蛍、翁長聖。
素材は揃っています。足りないのは「J1の強度への適応」だけ。
同じ昇格組のジェフ千葉が開幕5連敗で勝ち点ゼロなのに対して、長崎は開幕戦で白星を掴み、G大阪と引き分けた。崩壊はしていない。
長崎もきっと、その瞬間が来る。
行動だけが現実を変えます。
果たして、Vファーレン長崎はJ1定着できるのか。
26−27シーズンが大きな山場になっている。


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